何となくこれと繋がってるっぽいです。




「眠いよ、ジャン。」

タイトルに惹かれて読んでいた本も遂に飽きてしまい、うりぃ、なんて間抜けた小さな声を発しながら後ろの席に座るジャンの背中に体重をかける。
ここは毎度ながらの図書館、騒げないからなのか、実は彼が然り気無く優しいからなのかは知らないけれども鬱陶しい私をひっぺがしたりはしない。

夏が近付いて来たのを感じる雨の多いこの季節、今はもう雨は上がっていたが、湿度に弱い書物の為か備え付けられた古いエアコンが独特な音を静かな館内に響かせていた。

「だから、マルコは委員会だって言っただろうがよ…、今日はいつもより来んの遅ぇって。」

今度は重たい私を押し返すように、ジャンが寄り掛かってきたと思うと、そう告げる。

「待っていたいからいいの…だってさ、ジャンを中継点にしてるのもそろそろ焦れったいんだもん。どうせならちゃんとお話したいし…その…もうすぐ、お誕生日なんでしょう…?」

明ら様に尻すぼみになる私の言葉に振り返ったジャンは一度驚いた顔をしてみせたかと思うと、大げさに肩を竦めて鼻で笑った。腹立つな今の顔。

「おうおう、健気なこった!…なぁ、委員長さんよぉ?」

「っへ?!」

「ごめん、お待たせ。あと、僕の誕生日は今日かな?」

「ああああ!マルコくん、おめでとう、おめでと…う?わああああ、何もお祝い出来てません、ゴメン!そして、いつ戻ってたんですか!!」

「んー?帰りが遅くなるってくだり辺りからだね。」

「それは全部聞いてたって事じゃないですかっ!」

「だって、ジャンがしぃーってしてたんだもん。面白かったから、ついね?」

人指し指を唇に当てて、にっこり。

「プレゼントなんていいよ、それより、僕もジャンみたいに気軽に話し掛けてくれよ。」

そして、今度は首を傾げて、くすくすと効果音が聞こえてきそうに彼は笑う。
思っっていたより、ずっとその幼い表情につられて私もはにかんでしまう。

見たのか聞いたのか、はたまたこの図書館のどこかで知ったのかは忘れてしまった。けれど、10の24乗分の1の確立で人は壁をすり抜けるなんてことも、運命の人に出会うことが出来るとかなんとか。

まぁ何でも良いのだけど、兎にも角にも、こんなにも幸せなのだからきっとこれが運命だと知った。