〜序〜

 夏合宿を数日後に控えたとある土曜日の夜。稲城実業野球部の監督である国友は突然、ここのOBだという怪しげな一人の男を連れてきた。自称“魔法使い”というこの男、全国各地をまわり講演会をしているらしい。
 その日の夜、部員たちは寮のミーティングルームに集められ、自己啓発とやらの講演に強制的に参加させられた。男はかつて国友と同じチームでしのぎを削った仲らしく、どことなく二人の間に親しい雰囲気が見て取れる。
 ところで、部員たちは明日が久々のオフありで、気分が高ぶっていて「早く終われ」と気が気じゃない。
 男はありがたいのかよくわからない講釈を一通り並べ終えたあと、「アブラカタブエロイムエッサマハリクマハリプイプイ〜」と何やらわけのわからない言葉を呟きはじめた。部員たちは突然の出来事にぽかんと黙りこむ。
 それから男はほぅっと一息ついたあと、満足気に一同を見回して言った。

「今、僕は君たちに魔法をかけた。毎日毎日、野球漬けで大変だろう。なに、ほんのご褒美だ。......いや、うん、気にしなくていい。明日一日、幸運を祈る。素敵な休日を!」

  | top |
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -