ごみ箱 | ナノ
ごみ箱
途中で投げた奴とか、よく分からないのとかが突っ込まれる
犬を買ってもいい?と小首をかしげたジェイソンの腕の中に居る茶色いむくむくは私の世界ではクマと呼ばれる猛獣である。
「(森で迷っててね)」
「でもそれ子供だよ。きっとお母さんが心配してるよ」
「(うん。だからおっきいのも居るんだ)」
呼ばれたみたいに木の影から出てきたのはもう言い訳のきかないマジもんのグリズリーでハチミツあげるんだとか言ってるけどジェイソン頭ガッツリ行かれてるじゃん食われすぎて帽子みたいになってんじゃんプーさんのハニーハント乗りたいとかそれマンハントされてる状況で言ってる場合じゃないしおいおいどこに持ってかれるつもりなの巣穴?巣穴で貯蔵されんの?来る冬に備えて土の中に埋められて冬眠の間に時々掘り返してはパクつかれんの?ちょっと笑ってる場合じゃないんだよジェイソン。ジェイソン!ジェイソーン!

/ジェイソン
(07月30日)
ゴミの中で産まれたからゴミのように死ぬんだよと心底気の毒そうに彼女が告げるのでなるほどそうなのかもしれないと、俺も心の底から思って、でもそれ以上は考えずにうんと一つうなずく。心のなかでの、優しいところの置き場所と、ものの真実を考える場所はたぶん正反対に離れている。彼女はいつだって優しいけれど、いつでも嘘など言わないし、気遣いというのもまた、きっと俺なんかにはよく分からないところでなされている。他人に悪意なんて持ったことすらないんだ。だから本当の、目に見えるだけの現実がどれだけ人の心を傷つけるのかが分からない。彼女はそういう人。毎日俺の惨状を告げては心を痛めたように俯いて泣く。私もいつかいなくなるんだよと言われて、それにはうんと言いかねた。

/トーマス
(07月30日)
他に見えなければいいのだと、そのひらめきを思い立ってすぐに彼の後ろから両目に指を突き立てると中指と薬指はやわらかくて温かい視力を湿った音と一緒にかき回した。
いつだって淡いやわい美しいものに囲まれていなければ彼は死んでしまうのだそうだけれど、目をつむってしまえばきっと花も虫も区別はつかないのだろうから、それは半分間違いでもう半分はただのそうありたいという願望なのだ。その証拠に純真を好む彼が大事に大事にとっておいた私は、いまや恐ろしい嫉妬を振りかざし、毒の牙であるかのように彼の両目にずぶりずぶりと突き刺している。花を詰んだつもりで握っていたのはぐねぐね体を捩らせる芋虫だった。私は開いた掌でうごめくのを、気味が悪いと投げ捨てられるのがおそろしい。湿った地面を這う横で、彼の目に見つめられる花びらを見上げるのがとてもおそろしい。
指を引き抜くと「なにしてるんだ」と彼が振り向くが、その目はもういつも通りに引き攣れたまばたきを始めていたので私は濡れた指をセーターで拭いながら、いつものようにうっとりと、思う。私を見つめる青い瞳の、なんて美しいことだろう。同時に、この青に映る、淡くてやわくて美しいものたちの、なんと憎々しいことだろう。

/リメフレ
(07月30日)
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