わんこと共存?
コンビニというのは便利なだけでなく、困った人を助ける救世主みたいなものだと思う。
もう一人のバイトを残して、真太郎は休憩時の一服でふとそんな事を考えた。
以前働いていた居酒屋が潰れ、住んでいた木造アパートが火事で焼けた。
都心にいてもしょうがないと思い、家賃が安い郊外に思い切って引っ越したのは先月の事だ。
24歳、独身、中卒、フリーター。
現実というのは厳しく、こんな肩書きの男を雇ってくれる所は少ない。
頼みの綱であった居酒屋は2駅先。
家から遠いのは面倒臭い。そう思って受けた、アパートから徒歩5分のコンビニは即日採用だった。
コンビニバイトの経験者というのは、本当にどこでも生きていけるんじゃないかと真太郎は常々思う。
「真太郎さーん、チケット関連分かんないんすけど、ちょっといーすっかー?」
間延びした声に呼ばれ、真太郎は急いで煙草を消した。
「すみません、お待たせしましたー」
営業スマイル――といっても、口元だけつり上げたもの――を顔に張り付け、真太郎は深夜に来る若者の対応に向かったのだった。