それぞれの想い(Ryuji.side)2
「寛」
「あ、隆二。どうしたんだよ?」
漫画を読んでいた寛が顔を上げた。父から寛の病名を告げられた次の日、寛のお見舞いに向かった。
どうしても、寛に会いたくてたまらなかった。
「どうって、寛のお見舞いに」
「わざわざ、ありがとう。でも、全然大したことないんだ。ただ熱が下がらないってだけで、もう慣れたし」
寛人には告げていない、父がそう言っていた通り、いつも通りの寛だった。
「身体辛くないの?」
「まあ熱でだるい時はあるけど、それだけだし。点滴とか要らないって言ってるのに、無理矢理つけられるんだよ、隆二からもおじさんに言ってくれよ」
何も知らない寛を見ていると、自分の中から沸き上がるやるせない気持ちがどうしようも出来なかった。
もし、寛は自分の病名を知ったらどうするんだろう。
想像の枠は越えない。
寛が靭帯を切った時、寛のずっと傍にいた。
傍にいたはずなのに、寛が追いつめられていたことを知ったのは、寛が屋上に向かったあの時だった。いつもは辛いときは辛いっていう癖に、本当に辛い時には一人で抱えこむ寛が心配でたまらなかった。
もうあんな想いはしたくない。
「俺は心配だから、点滴には賛成だよ」
「隆二は過保護すぎるんだ」
その言葉に曖昧に笑って、ベッドの横にある椅子に腰掛けた。