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叔父の話が終わり、照明がついた。
握られていた手がパッと離される。
「伊吹君も伊織君も泣かなかったのえらいねえ」
おばあちゃんがしみじみとそういった。
「僕、強い子だから泣かないよ。お化けなんて全然怖くない」
そういったのは伊吹だった。
あくまで気丈を装っている伊吹が面白くて、にやにやとした顔で伊吹の方を見てしまったらしい。
「何、伊織。伊織の方が怖くて僕の手をずっと離さなかった癖に!」
「え」
それはお前だろう。
弟である伊吹が頑張っている所に水を差すのは、兄として無粋だと思い、黙っておく。
「伊織、お化け駄目だったのか」
叔父さんが俺に聞いてくる。
「気持ち悪いのはちょっと」
これは本当だ。俺は嘘はついていない。
しかし、親戚中は伊吹より、俺の方がお化けが怖いと思ったらしい。
その後も、今日の夜眠れなくなったら、叔父さんが一緒にトイレいってやる、とか。
トイレ行きたくならないように、あんまり水分とりすぎないようにしなさい、とか。
父様と母様が一緒に寝る?と心配してくれた。
親戚中に心配された俺は、ほっこり胸が暖かくなった。
でも、一番面白かったのは。
いや、面白いとか言っちゃいけないよな。
伊吹が自分の夜を想像して青ざめてる姿だったんだけど。