意地悪おにーちゃん




 これはまだ俺たちが小学校の頃の話だ。



 夏の夜。

 伊吹がやろうと言い出した、怪談話で親戚達は大盛り上がりをしていた。

 父親の方の実家だから、昔ながらの日本家屋。(といっても、敷地面積が広大で、豪華である事には変わりないのだが)
 雰囲気が出るからと、照明を全て消し、蝋燭一本の明かりで皆それぞれの怪談話を披露する。

 親戚達の顔は蝋燭の炎で怪しく揺らめき、怪談を話すときの親戚達は本気だった。

 こういったイベント事には、全力で参加するのが父様の家族、小鳥遊家本家のモットーらしい。父様のお茶目さはここから来ているのか、と納得したものだ。


「後ろを振り返るとね、そこには体半分しか無くて、血まみれになった女が……」


 叔父にあたる人が話していると、隣にいた伊吹がぎゅっと俺の手を握ってきた。ちらっと顔を見ると、怖さをひた隠した伊吹の顔があった。


 そりゃ、怖いよな。


 俺でもちょっと怖いと思ってしまった位だ。小学生である、伊吹には恐怖の一大イベントになっているに違いない。

 俺も外見は伊吹と同じ小学生だが、精神年齢は20歳を超えている。それくらいの歳になると、実体のない物より、実体のあるものの方が怖かったりする。

 いたずらをした時の母様とか。


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