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その後も絶え間なくやってくる訪問者に、小鳥遊家は対応に追われた。
ほとんど相手をしているのは、僕達2人。父様へのバレンタインもあるけど、父様は仕事で不在だからその代わりも僕達が相手する。
落ち着いたと思ったら、また次の来訪者が見える。
その繰り返しで、あっという間に夜になり、僕と織の部屋は様々なプレゼントの山が出来ていた。
「最近のバレンタインはチョコレートという相場は時代遅れなんだな」
去年までは大方チョコレートだったはずなのに、今年のバレンタインは3分の1こそは有名ブランドのチョコレートだが、残りはハンカチや鞄、キーケースや手帳と誕生日並みのラインナップになっていた。
「どうせおばさま達の考えだと、ゴディバとかモロゾフとかだと他の人と被るから嫌なんでしょ」
「まあ、そっちの方が助かるけどな。チョコレートとかいっぱい貰っても賞味期限切れるだけだったし」
「だからって、物も嫌だよ」
「否めないが、捨てるのもなんだか勿体ないな」
織が開けた包装紙に入っていたのは、エルメスの手帳。シンプルな革を好む織が、プレゼントしたら喜ぶブランドだったりする。
「ちょっと待って」
「ん?」
「それ使うとか言わないよね?」
「え、駄目なのか?」
「駄目に決まってるって! そんな何処の馬の骨だか分からない女の物なんか使わないでよ」
「んーでも、勿体ないし」
「没収!」
「こら」
織の手から手帳を取り上げ、箱の中に戻した。