お兄ちゃんの煩悩
(R18/一部近親表現あり)
父方の日本家屋で越す大晦日は、紅白歌合戦を親戚達とゲームをしながらわいわい見るのが恒例だったりする。途中で母様が年越しそばを叔母様達と作ってもってきてくれて、年も越していないのにそばを食べ終えると、みんなさっさと就寝してしまうのだ。
近くの寺から僅かに聞こえてくる除夜の鐘を聞く頃には、皆寝静まっていて。
お兄ちゃんの煩悩
除夜の鐘が凡庸に成り出す。小鳥遊家の実家から寺まではそんなに離れていないため、除夜の鐘は結構大きな音で聞こえてくる。
眠りの浅かった俺は除夜の鐘で一気に夢から現実へと引き戻された。
人間の煩悩の数は108回だから、後106回か。
簡単に計算してあと1時間は寝れない計算になる。
暇だからと言って、起きて本を読む事も出来ない。俺は暗闇の中で過ごす暇な時間にため息をついた。
「……織、起きてる?」
隣の布団から聞こえる伊吹の眠たそうな声。
「鐘に起こされた」
「俺も」
「暇だな」
「そうだね」
ごそごそとお互い寝返りをうち、薄闇の中で見つめ合う。
「そっちいっていい?」
「ああ」
俺が頷くと、伊吹が俺の布団の中に入ってくる。僅かにひんやりとした空気が入ってくるが、触れ合った足が温かくて、足を絡ませる。人肌が増えると布団の中がぐっと温かくなる。
「くすぐったいよ」
目の前の伊吹が照れくさそうに笑う。
「俺は寒い」
「織の方が寒がりだもんね」
「寒いのは我慢し難いな」
「それにしても、12月ってあっという間だったね」
「そうだな」
「今年も宜しくね、織」
「ああ」
「今年の目標は?」
「んー……」
鐘は一定の感覚で鳴っているが、段々と温かくなってくる足に、再びうつらうつらしてくる。
「織ー」
「んー…」
「織ってばー」
「ん……」