愛し君
段々と冷え込んでくる秋の夜。徐々にライトアップも始まり、今自分が待っている傍にある木は電球が点滅していた。
それをぼんやりと眺めていると、視線の向こうに待ち人が現れる。
すらりと高い身長と彫りの深い男前の顔は、ダークスーツが本当によく似合う。
幼い頃から馴染みの彼の顔を見る度に、年甲斐もなく胸が弾んだ。
「ごめん、隆二。待ったよな?」
「そんなに待ってないから、大丈夫」
俺が笑うと、寛は申し訳なさそうに眉を下げて「ごめんな」と謝ってくる。
約束5分前。
いつもとお決まりのそれに、思わず苦笑する。
「じゃあ、行こうか」
「そうだな」
俺たちは肩を並べて歩き出した。
*
立ち並ぶ木々にも、ライトアップが施されていて、12月を目前にした11月から点滅を始めているらしい。
目的地までの道のりを、いつもの調子で進んでいく。
「久しぶりだな」
「そうだね」
「いつぶりだ?」
「最後に会ったのが9月だったから、2ヶ月ぶり位かな」
「そんなになるのか」
「お互い忙しいからね、昔みたいにはいかないよね」
「そうだな」
並木道を抜け、たばこ屋の角の交差点を右に曲がる。
「最近はどうだ?」
「特に変わりはないかな。そっちは?」
「相変わらず、て所か。あ、でも……」
いつもの店に脇道に入ったところで、寛が足を止めた。
「俺、今度結婚する事になったんだ」
「えっ」
その瞬間、周りから音が消えた。
気がした。