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「織ー、準備出来た?」
ひょっこりと、俺の部屋に伊吹が顔を出す。
今日の伊吹は、フードの覗く灰色のピーコートと、シルエットの細い黒のスラックスに身を包んでいて、髪もいつもより気合いが入ったセットになっている。
ひいき目なのかも知れないが、モデル並みに格好可愛い片割れに、思わず頬が緩む。
「ああ、お待たせ」
「あ、それ着てくれたんだ!」
対して俺は、ストライプの入ったシャツに黒の革ジャンを羽織り、ターコイズのスキニージーンズ。どちらも伊吹が数日前の誕生日でくれた服だ。
ちなみに、伊吹が着ている服は俺がプレゼントした服だったりする。
普通なら服をプレゼントにすると、サイズが合わなかったりするが、双子だからそんな心配はない。ここ数年の俺たちのブームは、誕生日プレゼントにお互いに服を送り合う事だった。
「着やすくていいな、これ。この革凄く馴染むし、中地が温かい」
「でしょ! 俺も色違いの茶色一緒に買ったんだ。織がくれたこのピーコートも凄く気に入ってるよ」
「そうか、良かった」
実は俺も伊吹と全く同じ事をしていて、色違いの黒のピーコートを買ったが、なんとなく気恥ずかしいので黙っておく。
「じゃあ、行こっか?」
「ああ」
弾んだ心で、街中へと繰り出した。