担任
職員室には、既に伊吹が担任と思われる先生と話していた。
「織、遅いよ」
「ごめん」
伊吹にそう謝った後、先生と思われる人物にも「遅くなって申し訳ございません」と謝罪を入れる。
「別に大丈夫だ。お前の担任呼んでくるからちょっと待っててくれ」
そういって、先生がいなくなってしまう。
「朝ご飯一緒に食べようかと思ってたのに、織どこに居たの?」
「食堂。同室のやつが案内してくれて」
「食堂にいたのかあ。どうりでカフェテリア探してもいないわけだ」
織だったら、朝は絶対カフェテリアだと思ったのに。と拗ねたようにぼやく伊吹に、俺は頷いた。確かに、同室者に誘われなかったら、適当に地図を見て、カフェテリアに向かったのだろう。
俺の行動パターンは、伊吹にはお見通しらしい。
「待たせたな」
先ほどの先生が、もう1人の男の先生を連れてきて戻ってきた。
「本当に双子なんだな。一瞬見たら、分からなくなりそうだ」
「兄は結構凛々しい顔してて、俺はへにゃんが見分け方らしいです」
「ああ、「なるほど」」
納得した顔で、先生2人は俺ら兄弟を見比べる。俺の方が無表情でいる率が高いらしく、アメリカでもそういう判別の仕方をしていた。俺からしてみたら、髪のセットの仕方とかも違うはずなのに、他人から見たらそうでもないらしい。
細かい所で言えば、伊吹は3センチ俺より背が高い。
「兄の方の担任の福田だ。教科は古典。苦手なんだってな? 俺のクラスでいる限り、ばっちりしごいてやるから覚悟しとけよ」
俺は渋い顔を浮かべながら、「宜しくお願いします」と言った。