It came the winter this year too.2
スキップでもして走り出しそうな伊吹を見ながら、貸してもらったマフラーに息を吹きかける。はぁ。と吐いた白い息がマフラーの間から揺蕩って消えた。
クリスマスが終わったイングランドはニューイヤーの装飾に変わり、クリスマス時期に比べて少しもの寂しさが漂っていた。クリスマスが8割だとしたら、ニューイヤーは2割ぐらいの勢いで去って行く。イングランド人は皆クリスマス休暇を早くとるから、日本よりクリスマスに国中が浮かれているが、その分年明けは早い。
「なに考えてるの?」
不意に聞かれて、顔を上げれば、心配そうに首を傾げる伊吹。
「なんでもないよ」
「えーそんなことないでしょ」
「んーもう年あけちゃったなぁって思って」
「そうだね。去年はなんか早かったなぁ。この間までアメリカにいたのにね」
学園に入ったのが昨日のことのように感じているのは自分だけではないらしい。
「そうだな」
この調子でまた1年と巡り巡れば、伊吹とのゲームは俺の負けだ。
「理事長、気づいてくれるといいね」
「えっ」
てっきり伊吹は気づかなければいいと思っていたから、少しびっくりした。
「なにびっくりしてるの? 僕悪魔じゃないんだけど。僕がゲームにしたのは、織の不幸の為じゃないよ。こんなに近くにいるのに、実際近くで話しているのに、気づかないなんて僕なら絶対ありえないし、それが2年続くようなら待ち続けても織が不毛なだけじゃん」
「俺、待ってるのか?」
「違うの?」
言われて、そうかと気づいた。この漂う憂鬱感は、気づいてくれない隆二に対しての不満か。
そう思ったら少し笑えた。
「そうだな。待ってるな」
「でしょ! もう分かりやすいだから」
そう言って伊吹はむくれながら、ポケットに突っ込んでいた俺の手を取り、指を絡ませる。
「でも、気づかなかったら、織が前に進めないかもしれない」
繋いだ手にギュッと熱がこもった。