告白
「ずっと気になっていたんだが、伊吹と何かあったのか?」
そんな伊吹の変化に疑問をもつのは当たり前の事で、お風呂上がりに思案していた薫に理由を聞けば、そう返ってきた。
「何かあったといえば、あったんだけど……」
何から話していいのかこちらも考えこんでしまう。
「無理に言わなくて良い。ただの好奇心だ」
「別に言いたくないわけじゃないんだ。どこから話せばいいかちょっと迷って……」
今まで避けてきた話題に触れると薫も感づいたらしく、お風呂上がりの緩んだ空気が一瞬ピリっと締まった。
黙っていても問題は起こらないが、薫には聞いて欲しかった。
今ならすんなり話せると思い、意を決する。
「……嘘みたいな本当の話なんだけどさ、俺……実は生まれる前の記憶があるんだ」
「え?」
さすがの薫もまさかそんな話になると思っていなかったという表情をしていた。
それもそうだろう。
伊吹の心境の変化があった理由や事柄を聞いただけなのに、いきなりスピリチュアル的な話題になったら誰だって同じ反応をするだろう。
「水無瀬寛人、それが俺の前の記憶なんだ」
「………水無瀬? 寛人?」
薫が呆然と復唱する。
水無瀬薫である、薫自身が知らないはずはなく、次の瞬間には唖然とした表情がこちらに向いていた。