神の気まぐれ3
涙が枯れるまで子供のように声を上げて泣いた。
そんな俺に隆二は何も言わず、涙と嗚咽が落ち着くまで手を握りながら背中を擦ってくれた。
隆二に会うと泣いてばかりの俺を、隆二はどう思っているのだろうか。伊織として会った回数は数える程で、そのうちの半分は泣いているような気がする。迷惑だと思われていないだろうか。
考え始めると言いようもない不安が胸に広がった。
嫌われたくない。
そう思うのに上手くいかない。
涙を拭いて、立ち上がる。
「すみません。ご迷惑かけて」
「大丈夫。気持ちは落ち着いた?」
「……はい」
そこら中に散らばっている服や情事跡を整えようと足を踏み出せば、上手く足に力が入らなかった。
「おっと」
がくん、と膝から崩れ落ちそうになる身体を隆二が支えてくれる。
「大丈夫?」
「はい」
「ゆっくりで良いから、まだ座っていて」
近くの会衆席まで支えてくれ、隆二はジャケットを脱いで上からかけてくれた。俺を座らせると、そこらに散らばっている俺の服を集めてくれる。
一通り片付けを済ませると、「立てる?」と手を差し伸べられた。
その言葉に応えるようと手をとって立とうと試みるが、足に上手く力が入らない。
もたもたしていると、「よいしょ」との声と共に横抱きにされた。
隆二の匂いがより一層近くなり、一気に身体が緊張する。
「気を悪くしたらごめんね。少しの間我慢して」
それを恐怖だと勘違いしたのか、隆二がそう一言謝ると、俺を抱えたまま足早に寮への道を歩き出した。