神の気まぐれ2

「伊織くん?」


 隆二………。


 なんで此処に。
 言葉にすることも動くことも出来ずに、呆然と隆二を見返した。


 状況を把握したのか、隆二が血相を変えて駆け寄ってくる。


「伊織くん?! 大丈夫?」


 乱れた姿をみて何があったか分からない程、隆二は甘くない。
 この状況をどう説明をすればいいのか。突然の出来事に上手く頭が整理出来ず、狼狽えた。


「合意……じゃないよね?」

「………」


 ここで頷けば、斯波は罰せられるだろう。
 それが斯波にとって良いことなのか、悪いことなのか、必要なことなのか、この状況下で判断が出来る程冷静じゃない。



「ごめんね。怖かったよね」



 そう言われて、思い出したように涙がじわじわと溢れてきた。


 怖かった。
 本当に犯されるかと思った。


「っ……ふっ」


 張りつめていた緊張の糸が切れ、嗚咽と共に身体の震えが蘇ってくる。


 ___1人で怖かったよね。


 ガンと宣告されてから、1人で居る事が極端に嫌いになったあの時も。今も。


 いつだって隆二は俺の芯を捉えていて、一番欲しかった言葉をくれ、分かって欲しい気持ちに同調してくれるんだ。

 たった一言。
 一言だけなのに。

 その一言が強く、優しさに満ちていて。20年近く経っても変わらない隆二に胸が強く締め付けられて。


 また隆二を困らせると分かっていながら、声を上げて泣いた。


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