誕生



 沢山の人に囲まれている、気配がした。誰かに身体を揺すられる。これは揺すられるというよりは、シェイクされていた。


 驚いて目を開けようとしたが、開けたのか開けてないのか定かではないくらい良く見えなかった。光が目に沁みたから、ちゃんと目は開いているらしい。

 白くて眩しくて、周りがよく見えない。


 なんだこれは。


 口にしようとしたが、それは言葉にならなかった。
 赤子の喘ぎのような音が口から漏れる。

 背中を強く叩かれた。胸が苦しくて、涙が出てくる。
 漸くはっきりとしてきた意識が外界の声を捉えた。


「泣かない、どうしよう」


 泣きそうな女の人の声。


「大丈夫ですよ」


 医者のような男の人の励ます声がしたかと思うと、より激しくシェイクされた。


 やめろ。


 と叫びをあげると、周りが歓声をあげた。


 ――オギャーオギャー


 その産声は、確かに俺の口から出ていた。


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