伊吹の帰国


「おりいいいいいぃぃ」


 夏の終わり。学園ももうすぐ始まるため、伊吹の帰国の日。
 空港に迎えに行けば、到着ゲートから姿を現した伊吹が大きなキャリーを引きながら全力で走ってきた。


「待て、伊吹。うわっ」


 そのまま勢いで抱きつかれて、後ろに倒れそうになるがなんとか踏ん張って抱き返す。
 名前の入ったプラカードを持って同じように到着者をまっている、周りの視線が少し痛い気もするが、同じように再開を喜んでいる人も多いので、気にしないことにした。


「会いたかったよ、織」

「俺も会いたかったよ」

 
 背中をポンポンと叩き返せば、安心したのか抱きしめる力が弱まった。


「織にこんなに会えなかったの生まれて初めてだったから、本当に辛くて」

「確かにこんなに離れているなんてこと今までなかったな」


 何かしら顔を合わせてはいた。会えない時もあったが、せいぜい3、4日程度ということが多かった為2週間というのは初めてだった。


「元気そうで良かった」

「織もね」


 そう言って、伊吹はにこりと笑う。その笑顔をみて、心がホッと落ち着いた。会えなくて寂しかったのは、どうやら伊吹だけでもないんだな、と人ごとのように自分でも感じる。
 毎日のように伊吹が側にいることが多かったからか、側にいるとなんとなく安心する。


「お昼食べたか?」

「うん。機内食がこれでもかって程出たから結構お腹いっぱい」

「そうか。じゃあ、学園に戻るか」

「うん」


 伊吹のフランスでの話を聞きながら、車へと向かった。


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