お盆計画=兄の信用度0% 2
「それでね。お盆なんだけど、織ってこっちで学会発表だったよね」
「ああ、今回はポスター発表だけだが、お盆期間は一応東京にいる事になってる」
ポスター発表の場合、会場に長く拘束されるわけじゃない。だが、質疑応答があった際に対応出来る人員がいないのも、発表する意味が薄れてしまう。
「お父様達も向こうで仕事があるみたいで……」
伊吹の話によれば、お盆はグランマも父様達と一緒に向こうで過ごすらしい。適当に家を使うにも、丁度空いている期間で壁紙の張り替え等を行う予定で無理との事。
つまり、俺は学園に残る事が決定した上、今年はみんなバラバラのお盆になるらしかった。
この学園は都心から結構離れているから、学会の時だけホテルをとってもらえば大丈夫だろう。
「お盆なら、そろそろホテルの手配頼まないとな…」
「それが心配でどうしようか迷ってるんだよ」
「何がだ?」
「織って方向音痴だし」
「そんな事は……」
学園内で2度も迷子になっている上、いつも地図は伊吹に任せているから今更方向音痴ではない、と言い切れる自信はなかった。
「放っておいたら、その辺の人に絡まれてるし」
「そんな事は…」
「ない事ないよね」
「うっ」
これに関しては該当がありすぎて、言い返す事が出来ない。
「まあ、でもそうは言ってもこればっかりはどうしようも無いんだけど」
弟に心配される兄ってどうなんだろうか。
兄の信用度ゼロだ。
大丈夫だ。と言い切っても、疑いの目を向けられて、なんとも自信がなくなる。
「やっぱり心配だから、秘書の方だけでも日本に残ってもらうように手続きする!」
「そんな悪いだろ? 一人で大丈夫だ」
「大丈夫じゃないって! ねえ!」
それまでずっとソファーで映画を見ていた薫に、突然伊吹が話を振る。
伊吹の薫への態度は相変わらず冷たく感じる事はあったが、前よりも会話するようになった。
2人の間に何があったのかは知らないが、ぎくしゃくしているのを見るのは寂しかった事もあり、この傾向は嬉しかった。