お盆計画=兄の信用度0% 3


「織一人じゃ心配だよね!」

「確かに……」


 薫がしみじみといったように呟いた。
 2人の心配そうな目が一斉にこっちを向く。


「ちょっと、待て。俺のどこが心配なんだ」

「どこがって……」


 全部、と言わんばかりに言葉を濁した伊吹に、薫が追い打ちをかけるように話を続ける。


「地図を持っているのに迷う所だ」


 事実なだけに何も言い返す事が出来なくて、学園内で迷子になった過去の自分に臍を噛んだ。


「それで、場所はどこなんだ?」

「国会議事堂の近くだったと思う」


 薫が国会議事堂か、と呟いた。


「それなら、俺の家に来るか?」

「「え?」」


 突然の提案に、俺と伊吹の声がハモった。


「俺の家から国会議事堂まで2駅位だし、歩いても行ける距離だから送る事も出来るが?」

「良いのか?」

「狭くて汚い家だが、それでも良いなら」


 願ってもみなかった提案に、一瞬浮かれる。だが、薫の家に行くと言う事は、寛人の時兄だった雅人に会う事にもなりかねない。それが良いのか、悪いのか判断しかね、考えあぐねる。


「ホテルとかより断然番犬付の方が安心出来るし、織をお願いします!」

「ちょ、待て伊吹」


 番犬って何だ。


「ああ、任せろ」


 番犬という言葉に対して不思議に感じる事もなく、薫が強く頷いた。

 いつの間にこんなに固く結託しているのか謎だったが、俺は有無を言えず、お盆は水無瀬家で過ごす事になったのだった。


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