後輩のお願い2
「ファンクラブ?」
俺の間抜けな声が辺りに響いた気がした。実際はそうでもないのだろうが。
「はい。先輩の事を好きって言っている人、多いんです。その人達とファンクラブを作る事を許して頂きたいんです」
それを聞いて少し面食らう。そんなに周りから好きって言ってもらえる程、後輩との接点は無かったはずだ。
「……俺のファンクラブを作っても、俺は何もしてやれないし、気持ちにも答える事が出来ない。と思う」
それでもいいのか?
そう聞けば、土岐津は「それでもいいです」と大きく頷いた。
それなら、と俺が頷けば、土岐津はまた顔をくしゃっとさせて嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます! 今から生徒会へ提出してきます」
「生徒会へ提出?」
俺が疑問符を抱けば、土岐津がファンクラブは生徒会に届け出をするものだと教えてくれた。
部活というより、同好会的な扱いになるそうだ。もちろん部費は出ないが、定期的に空いている教室を借りる事が一般生徒より容易に出来るようになるらしい。
そこで何をするのかは謎だが、それは俺の関与する所ではないと思い、黙っておく事にする。
「あの……、手続き上必要なので、アドレス教えて頂けますか」
「ああ」
と携帯を取り出して、アドレスを交換した。
生徒会。
連想するワードに頭のどこかに引っかかる嫌な予感を抱きながら、意気揚々と生徒会室へ向かう土岐津を、その背中が見えなくなるまで見送ったのだった。