God jeers at me.2
「あ、ああ、そんなのもあったな。あれ確か、大学のレポートだったか?」
神が顔を拭って、前髪を掻き揚げると、チャプと水音が跳ねた。
その水音が心臓が跳ねた音に微妙に似ていて、内心一層焦る。
「哲学のレポートだったと思います」
「なんでそんなもんお前が見れるんだ?」
「教授に頼み込めば、卒業生のレポートぐらい見せてくれますよ」
「Dammit, that dirty old goat.(くそっ、あのエロじじい)」
「あの小麦色の肌が汗で濡れる所が良い」等と、洋物黒人AVについて熱く語ってくる白髪のじじいに、恨みを感じる。
いつもはエロばっかの爺さんだが、飄々と芯を突いてくる所は神と良く似ているかも知れない。
多分こいつと話したら、あの爺さんが簡単に神の事を気に入るのは手にとるように分かった。
あの爺さんはお気に入りの生徒に対して、学になるからとレポートは簡単に見せるはずだ。俺も過去に卒業生のレポートを何本も見せてもらっている。
「えっ?」
「いや、なんでもない。こっちの話だ」
あのレポートの件について話されるのは、好ましくない。
しかしだからと言って無理に話を切り替えるのもまずい。
「で、そのレポートがどうした?」
「なんかあのレポートだけ伊織さんらしくなくて、どうしたのかなって」
「俺らしくない?」
「いつもは論理がないと踏み込んだ事を書かないのに、不確定要素に対して踏み込んで書いている点です。あたかも、輪廻転生を経験し、存在しているというのを仮定して書いているようにも思える」
熱い湯に浸かっているはずなのに、背筋は恐ろしく冷えていた。