京都観光2
「この先大丈夫か? 無理なら、俺がおんぶするが?」
「兄貴心配しすぎだって! ごほっ、ごほっ」
わらび餅のきな粉を変に吸引したらしく、噎せ返る。
中々止まらない咳に、隣りに座っている隆二はすかさず背中をさすってくれる。
痰が手につき、その色を覗きこんだ家族達に、電撃が走った。
「血……」
「今日は無理しないで、明日にしよう」
親父の提案に、俺は断固として反対する。
「嫌だ。清水寺に行きたい」
「寛人、明日も回れるから、一番最初に来たら?」
俺に明日なんて来ないかも知れないのに。
「嫌だ……、お願いだから、今日見たいんだ。今日じゃないと駄目なんだ」
「……分かった。その代わり、おんぶ確定な。これ以上悪化するようなら、無理にでも連れ帰るからな」
そう言ったのは、兄貴だった。
「清水寺の夜景は綺麗よ」
「やっぱ名所は最初に回っておきたいものだよね」
と、梨絵さんと隆文さん。
両親も観念したように、頷いてくれた。
外は段々と夜に向かって陽が沈み始めていた。
段々と雲行きが怪しくなってきていて、先ほどより強く冷気が吹き込んでくる。