もうその手には……3
タオルをしたままは湯船に浸かるなんて言語同断。とマナーに煩い人が居たら、怒られそうだが、こいつの前でタオルを外すのは……。
なんか色々なものが減りそうで嫌だ。
脱衣所で着替えをする間も、こっちをちらちら伺っている神が気になって、何度も帰りたくなった。
おまけに言うと、神は着やせするタイプらしく、引き締まった筋肉が羨ましい。
寛人の時は、筋トレすればするだけ筋肉が付く身体だったからか、筋トレに苦労した事はなかった。だが、小鳥遊の血筋なのか、食べても太らなければ、筋肉も付きづらい身体は、同じ筋肉量をつけるの為には毎日何時間もウエイトトレーニングしなければ付かないだろう。
「入らないのか?」
いつまでも残念そうにその場に立ち尽くしている神に声をかけた。
言葉にはしないが、俺がタオルをとる事を期待していたのか。
十中八九そうだろうな。
こいつの変態っぷりを把握しても嬉しくもなんともないのだが。
「では、失礼します」
神もタオルをつけたままだった。
二人分の体積に、お湯が溢れ出る。
「こうやって伊織さんとお風呂に一緒に入れるなんて夢みたいです」
「俺は相当後悔してる」
「その伊織さんの優しさが好きです」
「うん、ありがとう」
今回は照れずにさらっと流せた。
耐性って怖いな。