まずい状況
この状況は大変まずい。
何がって?
桐生の膝の上に座っているこの状況が、だ。
会長のファンと思わしき人達の視線がチクチクと突き刺さる。
「す、すみません」
「いや、大丈夫だ」
慌てて離れようとした俺のお腹に手を回し、俺は膝の上にカムバックした。
「ちょ、あのっ!」
「それより、早くシャッターを切ってくれないか?」
「あ、ははははいっ!」
凄まれたクラスメイトはバシャバシャとシャッターを切り始めた。
「ニコリともしないのが、ここのサービスなのか?」
「そんなことは、」
「なら、笑え」
そう命令されて、カメラに引きつった笑みを向ける。
隣をチラリと見れば、満足気に微笑む桐生の顔。
やられた……。