突然の来訪者3


 表に出れば、桐生が何処にいるか一目瞭然だった。
 生徒や保護者の視線は、ちらちらと浮き足立った様子で桐生を視界に入れている。会長を一目見ようと、教室の外は人でごったがえていた。
 当初、ウェイティングなんかそんな出ないだろうと、外の受付は1人だったはずだ。だが今は、2人で外の客が中に入ってこないように、対応に追われている。


 本当に芸能人か何かみたいだな。
 

 噂によると、一時だけモデルをやっていた事もあるらしい。その証拠に、「あれどっかで見た事ない?」と制服姿の女の子達が話していた。
 周りの騒々しさをものともせず、今まで携帯を見ていた桐生がふと顔を上げた。


「っ!」


 僅かに瞠目し、息を飲む桐生に、俺は内心舌打ちをする。


 お願いだから普通にしといてくれ。


 会長の影響力なんてたかが知れているだろうと、最初は思っていたが、この惨状を見たら絶対そんな事は言えない。


 恐るべし男子校。
 今の状況で、女の子がいるだけまだマシか。


 会長の横を通り過ぎ、「お待たせしました。アールグレイのストレートとダージリンのミルクでございます」と男子生徒に紅茶を置く。


「お好みの色になりましたら、こちらのレバーをお引きください」


 とポットの説明を加えるが、会長に夢中の2人はそんな夢うつつの表情をしながら、頷いただけだった。


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