突然の来訪者2
携帯を取り出したは良いものの、しばし逡巡する。
「どしたん?」
「帰れ、と打つのも気が引けるなと思って」
「じゃあ、俺の平穏の為に話しかけたら殺す、ぐらいにしといたら?」
「お前の中で俺はどんなイメージだよ」
「え? 誘い受けだけど?」
「は?」
聞き慣れないワードが出てきて思わず眉間に皺が寄る。聞き慣れないワードではあるが、何となく良くは言われていない気がする。
あはは、と誤摩化しながら空笑いし、日下はトレーを持ってバックを出ていってしまった。俺は考えるのが面倒になって、先程の言葉通りに桐生にメールを送信する。
「やばいよ! 会長と話しちゃった!」
明治の女学生をイメージした袴を着たクラスメイトが嬉しそうにバックに入ってくる。
「小鳥遊くーん、これ運んで貰っていいかな?」
そんな様子を携帯を片手に眺めていた俺に、クラスメイトは縋るようにトレーを渡してきた。
「あ、悪いっ! 今行く」
「3番テーブルね!」
急いで携帯をズボンに仕舞い、紅茶を運ぶべく、俺もバックを後にした。