巣立ち?


 カフェテリアに寄っていかないか、という薫の提案で、カフェテリアに来た俺達はお茶を片手にテラスに座っていた。
 今くらいの陽気が一番丁度良い。
 暑すぎない日差しはゆっくりと沈み始め、時折ひんやりとした風が肌を撫でる。


「あれから喋っていないのか」


 急に話し始めた薫に、俺はお茶を飲んでいた手を止めた。
 心配気にこちらを気遣う薫を見て、俺は相当心配をかけていたんだと気付く。


「……そうなんだ。タイミング失ったみたいで……」


 学校が一緒だからいつでも会えると思っていた。


 だから、謝るのなんか簡単だと思っていたのに、向こうが避けているからなのか、はたまたタイミングが悪いだけなのか。昼休みもクラスの文化祭準備でゆっくりと食堂に食べに行けなかったりと、学園祭でバタバタとした学内で中々相見(あいまみ)える事が出来ないのが現状だった。


「そうか……」

「うん」


 桐生は話し合えば良いと言ったが、それは話し合いの場がある事が前提の事だ。


「薫が気にする事ない。きっとその内、仲直り出来るから」

「だが……」

「ただの兄弟喧嘩だから、大丈夫だ」


 ここ数日俺が落ち込んでいるのを知っている薫は、どこか煮え切らない表情で頷いた。


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