手持ち無沙汰
日下に強引に言いくるめられ、俺の名前は“午前中ウエイター”の欄に日下と共に書き込まれていた。薫は部活の出し物もある為、午前中の裏方に回るらしい。
「えーじゃあ、各自この分担で異論はありませんか?」
委員長の山本が黒板を見ながら確認をする。
異論はと聞かれれば、あるに決まってるが、それを許容してくれる日下でも無ければ、反論するのも面倒臭い。
「では、話合いを終わりにします。各自責任を持って、準備をお願いします」
今まで教卓で眠そうに座っていた福田が明日の連絡をさっさと済ませ、長かった今日の授業が終わる。
明日からの3日間は文化祭の準備で授業はお休みらしい。
とりあえず、帰って何しよう。
研究誌の原稿の締め切りが終わってしまえば、暫くこれと言ってやる事も無かった。時期も時期だからか、ここ最近目新しい論文がある訳でもない。今までは伊吹がいたから、こんな事考える必要もなかったが、伊吹がいない数日これしか考えてないんじゃないかっていう位だった。
ようするに、暇なのだ。
学校以外にやる事が無い。
昔はバスケ一筋だったから暇だと感じる事も無かったが、暇ってこんなに辛いもんだったんだな。
俺は何となく気落ちしながら、教科書を鞄の中に仕舞っていると、帰り支度を済ませた薫が机の前に来る。
「伊織」
「ん?」
「この後予定あるか?」
「無いけど」
「今日部活が休みなんだ。一緒に帰らないか?」
「ああ」
俺達は揃って教室を後にしたのだった。