話し合い
山本と呼ばれた学級委員長が、文化祭の話し合いを手際良く進めていく。
俺はそれをぼんやりと眺めながら、内心でため息をついた。
伊吹と喧嘩してから数日。
何となく謝るタイミングを逃した俺は、ここ数日一言も伊吹と口をきいていなかった。
もやもやと重たい塊が胸の上に鎮座しているかの様な気分を抱え、何度も伊吹に電話をかけようとしたし、メールを打とうとも試みたが、どれも違うような気がして、結局堂々巡りになるのだった。
何かきっかけでもあればいいのに。
他人任せで解決する訳も無いが、ここまでタイミングを逃してしまうと、縋りたくなってしまうのも現実だ。
文化祭の話合いは当日の役割分担まで進んだようだった。
出し物は、俺が休んでいる間に喫茶店に決定した、と薫が教えてくれた。
この数日間は、設営の方向性と話し合いを重ねていたが、それもなんとか決まったらしい。喫茶店だが、文明開化というのがテーマらしい。装飾も衣装も明治をベースとしたものが考案されていて、協賛を何処から誰が取ってくるか、単価をいくらにするか、そういう細々した所も既に決まっている。
「伊織ちゃん何する?」
隣の日下が俺の顔を覗き込んでくる。
「そうだな……」
黒板に書いてある役割分担へと視線を巡らす。
「裏方がいいな」
楽そうだし。
そんな安易な意見はそうそうたる段階で日下に却下される事になった。