23


身体が全快してマヒロと修行を共にするようになってからマルコは気付いことがある。
自分自身の力がより高まり強くなっていることだ。
このことをマヒロに話すと「狡い!」と嫉妬して言われるだろうから敢えて話してはいない。

「おれはちと別メニューにするよい」
「あ、はい。…わかりました」

今朝、食事後に外に出た時にそう言ってマヒロと別れたマルコは且つて怪童児と戦ったこの場所を訪れた。
不死鳥の能力が異様に向上しているだけでなく覇気の力もまた向上している。

「まさか…ここまで影響を受けるとはねい」

器が無くては決して持てないはずのあの覇気でさえも身に付いているのだから驚きだ。
確かに鬼雷鳥との戦いの折にマルコ自身も俄かにその力の存在を感じ取ってはいたのだが、あの時はその力に負けて暴走しそうになったのを鮮明に覚えている。しかし、それが今では意図して容易に扱えるようになっているのだから不思議だ。

「しかし、複雑だよい」

元の世界に戻った時、この力は持続されるのだろうか?
それとも無かったことになるのだろうか?
自分がこの覇気を持ったなんて知ったら家族は、オヤジは、何と言うだろうか?

海軍には確実に注視されるだろうし賞金額も確実に上がるだろう。それもこれも全てはマヒロの霊気によるものだが、こうも影響を受けて変わるとはマルコも予想だにしていなかったことだ。

瞼を閉じてゆっくりと息を吐く。集中して力を解放するかのように意識をするとマルコを中心に広範囲に覇気の衝撃がゴォウ!と音を為して放たれた。

いつしか白ひげや赤髪等が見せたそれとまさに同じものだ。

『覇王色の覇気』

「はァ…、柄じゃねェって」

そう独り言ちると眉間に手を当てながらマルコは溜息混じりに項垂れるのだった。





日が暮れかけた頃、マルコは家に戻る途中で奇妙な光景が目に飛び込み足を止めた。
森の中にぽっかりと浮かぶ空間があり、その先に広がるのは懐かしいと思える程の真っ青な青い空と海だ。
マルコは自分の目を疑ったが僅かに潮風の匂いを掠め、それが本物であることが直ぐにわかった。
唖然としたままその空間に近付こうと足を進めた時、その空間の先に広がる海に漂う一隻の懐かしい船の姿がそこにあることに気付いた。

ドクン――。

「ッ…、どういうことだ? モビー・ディックじゃねェか…よい」

この空間に触れれば帰れるのだろうか?

ふとマルコがそう思った時、その空間は一瞬にして弾けるようにして消えた。
突然のことでその場で呆然と立ち尽くしているとマルコの帰りが遅くて心配したのかマヒロがマルコを探しに姿を現した。

「マルコさん! 遅いから心配し…どうしたの?」

マルコを見つけて声を掛けたマヒロだったが、マルコの様子が少しおかしいことに気付いて言葉を変えた。するとマルコはゆっくりとした動きでマヒロに振り向いたがその表情は未だ呆気に取られたような様相だった。

「マヒロ…、今…、ここに海があったんだよい」
「え?」
「ここに穴みてェな空間があってよい、その先は海で、そこにおれの、白ひげ海賊団の船があったんだよい」
「!!」

何も無い空間に指を指し、浮かんでいた空間の大きさを描くように両手を動かして話すマルコにマヒロは目を見開いた。

「けど、おれが近付いて触れようとした瞬間にその空間は弾けるようにして消えちまったよい」

何も無い空間をマルコの手が名残惜しむように宙をなぞり彷徨う。
突然のことで驚きはしたものの今ではがっくりとして力が抜けるかのようにマルコは項垂れた。

「……マルコさん、ひょっとしたらもう直ぐ帰れるかもしれません」

気落ちするマルコを宥めるようとマルコの腕にそっと手を伸ばしたマヒロは軽く撫でながら、マルコから聞いた事象について一つの可能性を見出した。

「それは本当かよい!?」

マヒロの言葉にマルコは一驚するように項垂れた頭を勢い良く上げてマヒロへと顔を向けた。

「多分、そろそろ目を覚ます頃だと思います」
「……目を覚ます?」
「はい。マルコさんが見たのは多分その前兆です。彼は次元を司る妖怪なので」

マルコは眉をピクリと動かして少しだけ首を傾げた。

「妖怪? そいつは…、敵じゃねェのか?」

彼は――と話すということは見知った相手なのだろうが、それが妖怪であると聞かされたマルコが疑問に思うのも無理は無いとマヒロは苦笑を浮かべてコクリと頷いた。

「大抵は襲う妖怪が殆どですけど、中には味方になってくれる妖怪も稀にいるんです」
「へェ……、そうかい……。で、おれが見たのはそいつが原因ってェことかい?」
「えェ、恐らく。彼は起きている期間が非常に短くて亜空間で眠り続けているんです。でも、詳しくはわからないけど、ある一定期間を経ると起きることがあるの。マルコさんの話を聞いて時期的にもそろそろ目覚める頃だなァって……」
「そいつは何てェ妖怪なんだい?」
「『空幻坊』と言います。見た目は年を取ったお坊さんみたいな妖怪です」
「おぼ…?」
「あ、そっか。えっと…、まァ、会えばわかりますから、とりあえずもう遅いですし、家に帰りましょう。明日、その空幻坊に交信してみますから」
「あ、あァ…わかった」

マルコとマヒロはこうして家に戻った。
夕飯を食し、シャワーを浴びて汗を流してさっぱりすると、マルコはいつものように読み掛けの本を手にソファに座った。だが心内はいつもと違い色々と複雑な気持ちで一杯になり落ち着きが無かった。
夕食時、時折マヒロの様子を伺ったが別段特別何も変わった様子は無く、普段通りの彼女だった。

―― マヒロ、良いのかよい…?

本に目を移して集中しようとするが気持ちが散在して読むに読めず、背凭れに体重を預ける天井を見上げてゆっくりと溜め気を吐いた。
今時分マヒロは風呂に入っていて、その音が小さくではあるがマルコの耳に届いている。

「お前ェを連れて行くわけにはいかねェか……」

『欲しいものは奪ってでも手に入れる』

自分は海賊だ。
ずっとそうして来た。
だから今回も――。
そう決めていたはずだった。
だが何故か今回はそのことに対して逡巡してしまう。

連れて行きたい。
だが――。
連れて行ってはいけない。
しかし――。

自然に芽生える矛盾した思いが葛藤を生み、苦し気に口元を歪めてギリッと奥歯を強く噛み締めるマルコは目元を右手で覆って大きく息を吐いた。

「それが正しいことだからじゃよ」
「!?」

突然どこからともなく声が聞こえるとマルコは跳ねるように身体を起こして辺りを見回して警戒した。だが誰もいない上に気配も無い。
一瞬、自分の耳がおかしくなったかと思ったがそうでないことは次の瞬間直ぐにわかった。

「ふむ。時空を超えて来なすったか。お前さん、変わった空気を持っておるのう」

そんな言葉を紡ぎながら何も無い空間から年老いた丸坊主の男が突然姿を現したのだ。

「ッ…、お前ェは…まさか空幻坊…か…よい?」

唖然とした面持ちでそう問い掛けると丸坊主の男は顎に蓄えた白い髭を撫でながら微笑を浮べてコクリと頷いた。

「うむ、如何にも。久方ぶりに目を覚ませば面白いことになっておったんで、直ぐにこちらに出向いてきたわけなんじゃが……」
「……」
「お前さん、名は何と申すのかの?」
「ッ…、おれは…、マルコ…だよい」

驚いて呆然とするマルコが少したどたどしく名乗ると空幻坊は目を細めた。

「ふむ。ではマルコ殿。聞くがお前さんは人であって人ではない。そうじゃの?」
「それは…、悪魔の実の…不死鳥のことを指すってェなら、まァそうなるのかもしれねェが……」
「ふぉっふぉっふぉっ! そうか、不死鳥か! これはまた珍しい。怪童児や鬼雷鳥がマヒロを食せなんだはマルコ殿の存在がそれを阻んだのじゃな」

空幻坊が楽し気に笑ってそう言うとマルコは眉を顰めた。

「お前ェ、それじゃあまるで怪童児や鬼雷鳥の側に立つ物言いじゃねェか。マヒロの味方だろい!?」
「如何にも儂は味方じゃよ。だが儂は幻海に頼まれてマヒロを見守るだけの老い耄れ妖怪じゃからのう」
「ッ…、食われたら仕方が無ェ…そういうことかよい」

眼光を鋭くして疑いの目を向けるマルコに空幻坊は小さく笑った。

「んにゃ、怪童児や鬼雷鳥のような強い妖怪が襲来し、万が一にでもマヒロが死に瀕した時は、亜空間へ避難させるように術式を組んでおったんじゃよ。じゃが発動した形跡が無かったから不思議に思ってのう」

空幻坊は髭を撫でながらそう言うと反対の手に持つ杖の先をマルコに指すように動かした。

「お前さんを見て納得できたわい!」
「……そのことをマヒロは知ってんのかよい?」

怪訝な表情を浮かべるマルコの問いに空幻坊は首を振った。

「いんや、幻海から『決して知られるな』と、きつく言われておるから話しておらんよ。あの婆さんは恥ずかしがり屋じゃったからのぅ……。実に深い愛情を持った女ではあったが、情けや温情を決して表面に見せたりはせんのじゃよ」

マヒロの祖母である幻海については『ぶっきら棒で冷たく厳しい人だった』とマルコは聞いていた。
だが空幻坊が語る幻海の印象は大分異なるとマルコは思った。

空幻坊の言う幻海はまるで――。

「ほんに幻海とマヒロは似た者同士じゃて。面影もあるしのう」

似た者同士だからこそ受け入れられない部分もあるのだろう。
反抗期というものだ。
マヒロも相当の頑固者だから尚更だろうと思ったマルコはふっと微笑を零して小さく笑った。
そんなマルコの笑みを見た空幻坊は目を細めた。――成程のぅ――と、何やら少し納得のいくような表情さえ浮かべて小さく頷く素振りを見せたのだが、マルコは気付いていなかった。

「ふむ。お前さん、マヒロと心が通じた間柄じゃな」
「……あァ、そうだよい」
「じゃが、残念じゃが”今の段階では”マヒロと共にいることはできん」
「……おい、今の段階ではってェのはどういうことだ?」
「それを今の段階で説明したところでは意味は成さん。それに話すとお前さんは必死になって止めるじゃろうからのう! ふぉっふぉっふぉっ!」

空幻坊は髭を撫でながら楽しげに笑った。

―― おれが必死になって止める? どういうことだ?

空幻坊の言葉にマルコは眉間に皺を刻んで難しい表情を浮かべ、空幻坊をじっと見据えて必死に思考を回し、その意味を何とか理解しようと懸命になった。
だが風呂から出てきたマヒロが部屋に戻って来る足音が近付いて来てその思考は打ち消された。
空幻坊に気付いたマヒロが驚きの声を上げる姿を目に留めたマルコは少しだけ苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたが何事も無かったかのように平静を装った。

―― ……。

「嘘! どうしてここに居るの!?」
「マヒロ、元気そうじゃな。暫く見ん内に…、何じゃえらく別嬪になったのう」
「あ、う、うん、あ、ありがとう」

目を細めて嬉しそうに笑う空幻坊の言葉にマヒロは少し照れくさそうに頬を赤らめながら柔らかい笑みを零した。マヒロのその表情を見た空幻坊はマルコへと視線を向けた。そして、マルコと視線がかち合うと空玄?は意味ありげな笑みを浮かべ、マルコはそれに肩眉を上げて目を丸くした。

―― 何だよい?

「お前さんのおかげかのぅ」
「ッ……、否定は、しねェ…よい」

笑ってはいるがまるで何かを探るかのような目をしている。
思わず顔を顰めたマルコはふいっと顔を背けた。

―― この爺さん…、何が言いてェんだよい。

空幻坊はマルコとマヒロを交互に何度か伺い見ると「ふぅむ」と声を漏らして何かを考え始めた。

「……ふむ。うん、良いじゃろう」

考えが纏まったのか空幻坊はどこを見るともなく一人で納得するかのように頷き、手にしている杖でコンコンッと床を何度か叩いて音を出した。
するとマヒロは顔色を瞬時に変えて声を上げた。

「空幻坊! 待って!」
「何じゃ?」

焦りに似た声を上げるマヒロに空幻坊はキョトンとして見やる。マルコも少し驚いてマヒロに視線を向けるがマヒロは必死な様相を浮かべて杖を持つ空幻坊の手を掴んでいた。

「お願い、待って。せめて、せめて…、明日まで、ッ…、明日まで待って…ください」

弱々しく懇願するマヒロに空幻坊は目を細めた。

―― 流石に酷じゃったかのう。

「ふむ、そうじゃな。いきなりの”別れは”辛いか」
「ッ……」
「ッ!」

空幻坊の言葉にマヒロは顔を俯かせ、マルコは目を見張って声を飲み込んだ。

―― ってェことは…、この爺さんがおれを元の世界に帰してくれるってェことか?

ドクンドクンと心臓が強く脈打つが胸の内に苦しさが生じてマルコは表情を曇らせた。視線をマヒロに向けるとマヒロの表情は見えないが僅かに肩が震えているのがわかった。

「では、明日にするかのう。マルコ殿、お前さんもそれで良いかのう?」
「ッ…、それは…」
「おお、そうそう、言い忘れるところじゃった。マヒロは連れては行けん。儂が開ける次元の道は一度辿った者しか通れん道じゃ。つまり、それは次元を超えて来たお前さんしか通れん道だということじゃ」
「!」
「もし辿った者以外の者がその道を通るようなことがあれば空間が歪みを起こしてその者を亜空間へと引き摺り込み閉じ込めてしまうんじゃよ。死ぬことも生きることも許されん闇の世界へと落とされることになる。マヒロをそんな目に合わせたくはなかろうて? ましてや”愛した女であれば”尚更じゃろう」
「ッ……」

湛えていた笑みを伏せて真剣な顔付きへと変えた空幻坊がマルコを睨むような視線を向けた。そこにはマヒロを陰ながら見守り続けて来た者としての責任と愛情が入り混じっているようで、マルコは反論しようとする気さえ奪われて何も言えなかった。

―― ……そう…か…。

思わず両手に力が入って拳を形作る。
喉の奥に絡まる何かを飲み込む様に留飲を繰り返しつつ、ゆっくりと目を閉じたマルコは気持ちを整理して懸命に理性を保とうと自制を図った。
これは仕方が無いことなのだ。
元々は決して交わることの無かった二人が何の悪戯か世界を飛び超えて出会い結ばれた異質な関係だ。

最初から――わかっていたことだ。

「今夜は二人でいられる最後の夜じゃ。年寄りは早々に退散するとしよう。明日の朝、また来るでな。良いかなマヒロ?」
「……」
「……マヒロ……」

返事は無いまま俯いたマヒロはマルコの元に歩み寄り、マルコの袖を震える手でギュッと握った。そしてゆっくりとマルコの腕に寄り添うようにして額をそっと当て、小さく頷くだけだった。
空幻坊は憐憫にも似た目を模してマヒロを見つめつつ「ではな」とマルコに言うとぽっかりと開けた空間を作り出して姿を消すように去っていった。

マルコは自分の腕に額を寄せて顔を俯かせるマヒロに視線を落とし、袖を握り締めるマヒロの手に自分の手を重ねた。

「まさか、こんなに急な展開になるとは思っていなかったよい」
「ッ……」
「マヒロ、本当はお前ェを連れて行きたいと思ってたんだがなァ……」

マルコの言葉にマヒロはマルコの衣服を握る手に力が入った。

「おれは海賊だから、お前が拒んだとしても欲しいものは何が何でも奪ってでも手に入れるってェな、そのつもりでいたんだが……、あの爺さんの言葉通りならおれはマヒロを連れては行けねェ……」
「……マル…コ…さん」

マルコの名を小さく呼んだマヒロの声は明らかに震えていた。
声だけでは無く、ずっと小さく身体を震わしている。
マヒロが声を殺して泣いてるのは明らかだった。
マルコの袖を掴むその手に重ねた手で軽くポンポンっと合図のように送ると、握り締める手が僅かに緩んだ。
マルコはそっとその手を握って離させ、マヒロの顔を覗き込むように膝を折って腰を落とした。
やはりマヒロの瞳からは止め処無く涙が溢れ、頬を濡らし、大きな粒がポタポタと落ちて行った。
マルコは苦笑を零すとマヒロの頬にそっと手を添え、親指でその涙を拭った。だがその涙は止まる事を知らないように次から次へと溢れて落ちては頬を濡らして行く。

「マヒロ、おれはどこかで覚悟はしていた。お前と身も心も通じた時からこうなる日が近いような気がしていたんだよい。出来ることならマヒロを連れておれの生きる世界を見せてやりたかったよい。どこまでも広い真っ青な空や海が広がる世界を、大事な仲間という家族に、オヤジに、マヒロを会わせたかった……」

マルコはそう告げるとマヒロの後頭部に手を回して引き寄せ、ギュッと抱き締めた。マヒロはマルコの胸に頬を寄せたまま漸く「ふっ…うぅ…」と声を漏らした。
その声を耳にしたマルコはフッと和らいだ笑みを零しながらマヒロの背中をゆっくりとした動きで撫で続けた。

「なァ、マヒロ」
「……」
「おれはお前ェとここで共に生きたことは決して忘れねェ。マヒロはおれに証をくれたからよい」
「あ…かし…?」
「言ったろい? 生涯、心から愛した女はマヒロだけだってよい」
「!」
「もう二度と、マヒロ以外の異性を愛するなんてことはこの先に無ェだろうなァ。ずっとここに…マヒロがいるんだからよい」

マルコは笑いながらそう言うとマヒロの手を握ってそっと自身の胸に当てさせた。
小さくて細い愛らしい手を惜しむように握る力が強くなってしまうのは仕方が無いことだ。そして、再びマヒロのその手を引いて胸元へと引いて抱き締める。
マルコの腕の中にすっぽり入るマヒロの細身の身体は俄かに震えていて、それを愛おしむようにマルコは優しく包み込んだ。

できるなら……
もう少し……
あと少し……
少しでも長く……
傍に居たい……

お互いの気持ちが同じ想いに駆られて重なると、少しの時間も惜しむかのように二人は求め合った。
身体を重ねて一つに繋がった時、このまま時が止まれば良いのに――と、口にしなくとも溢れる想いは同じ。

「あっ…はァ…あっ…マルコ…さん…」
「くっ…はァ…はァ…マヒロッ……」

たえず涙で潤う瞳のままマルコを見つめたままマヒロは切な気に儚い声を漏らし続けた。
マルコもまた決して目を逸らすことなくマヒロを愛し気に見つめて優しく抱き続けた。

お互いの身と心に、忘れることのできない愛を、刻むかのように――。

そして時は止まることは決して無く、無情に刻一刻と過ぎて行くのだった。

空幻坊

〆栞
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