シオンは何が何だか分からない。ただ、綺麗なお兄さんがぐちゃぐちゃに顔を歪めて泣く所を世界の誰よりも近くで見ていた。
 シオンは色々と思うところがある。でも、口から出たのは全然違う言葉だった。


「俺も、リッカさんのこと……好き」


 それは言語化できなかった気持ち。今までふんわりと思っていたけれど、形にできなかったもの。
 リッカはぼろぼろと涙をこぼしながら、すがりついた。シオンの口の中に舌を差し入れた。とろ、と唾液が絡まる。はぁ、はぁ、と荒い息を吐きながらただお互いに、貪るように口内を舐め合っていた。
 気が付いた時にはもうすぐ夕方。しかしやめられなかった。舌を絡ませながら、夢中で腰を動かすシオン。お互い大きく膨らんだ性器をこすりあわせて、ぐちゅぐちゅにしている。先走りの汁が攪拌されて、はちみつのような液体になって床に垂れる。

「リッカさん、リッカさん…………かわいい、かわいい」
「あっ、あ、あ、そ、そんなことはないよ…………」
「ううん、リッカさんは誰よりもかわいい……!」

 シオンは鼻と鼻をこすりつけた。リッカは少しくすぐったい。ふふ、と微笑む。シオンが真面目な顔をして耳元で囁いた。


「リッカさん……真似じゃなくて、本当の交尾がしたい」


 リッカの頬がみるみるうちに真っ赤になる。心臓がどんどんと血を送り出して、眩むほどに鼓動が早くなる。
 まぶしかった。日が沈む方角からやってきた異国の子。施設生まれのリッカが知らない雄大な自然に育まれた、太陽みたいな男の子。真摯な眼差し。こすりつけられた性器の熱さ。
 どうしたら同性同士でそういうことができるのか、リッカには分からない。それなのに、頷いていた。リッカの灰色の髪の毛がかすかに揺れたのを見て、シオンもまた顔を赤くする。
 生まれたままの姿で、もじもじとしながら身体を探りあった。優しくて穏やかで頼りになる年上のリッカが、犬が服従する時みたいな恰好で身体を仰向けにしている。
 傷ひとつない白い肌。筋肉が綺麗についたしなやかな身体。そして足の間で大きく勃ちあがってはしたなく揺れる性器。

「リッカさん、綺麗……」
「あ、あ、あの、はずかしい……あんまり見ないで……」

 リッカは頬を真っ赤にして顔を隠そうとする。なだめるようにリッカのしっとりとした白い肌を撫でて、柔らかでむちむちとしたお尻を触る。入れられそうなのは、排泄をする所しかなかった。

「あっ、あ、なんかそこ、ヤ……あっ」
「やっぱりここしかないよね。でもこのまま入れると大変なことになりそうだから……」

 シオンは色々と考えて、ぷっくりとしたそこに舌を伸ばす。ぺろ、と舐めて舌をすぼめてリッカのナカに差し入れた。

「や、やだやだ! だめ、そこは汚いからぁ……あああっ!」

 シオンは構わず舐めた。ぐちゅ、ぐちゅ、じゅぷ、と恥ずかしい音が鳴る。リッカが身をよじらせたが、身体の負担を考えてシオンは舐めた。舌を粘膜の中で動かすと、ぎゅーっと搾るようにして吸いついてくる。丹念に舐めてナカをトロトロにして、外側を皺に合わせて丁寧に舐める。吸う。時折性器の方まで舌を伸ばして、口に含む。

「あっ、あっ、あああっ、そ、そこは舐めなくてもっ……あっ、あっ!」

 そう言いながらもリッカは腰を大きく動かし、よだれを口から垂らしながら悦んでいた。完全に無意識。丁寧な愛撫によって理性が完全に飛んだ、本能的なものだった。普段は物静かなお兄さんが見せる痴態に、シオンはぞくぞくとする。
 丹念に舐めしゃぶって、ようやくリッカの身体は受け入れる準備ができた。うつ伏せで腰だけを高くあげ、舌を突き出して荒い息を吐くリッカ。そのお尻の肉を掴んで、シオンは性器をこすりつけた。ぬるぬるとしている。

「リッカさん、じゃあ入れるよ……」
「……うん」

 リッカのナカがまるで女の子の性器のようにほぐれて、シオンの唾液を愛液のようにして垂らす。一度舐められながら射精したようで、床に水たまりができていた。性器の先端からは精液の残滓が垂れていて、床の水たまりと繋がっていた。 
 シオンはごくりと唾を飲みこんだ。くちゅ、と性器をこすりつける。粘膜がちゅっちゅっと歓迎のキスをしていた。腰を押しつけてゆっくりと体内に挿入する。

「あああああっ! あーっ!」

 後ろから突いているので、リッカがどんな顔をしているのかシオンには分からない。でも、その声に含まれるものは甘い。リッカのナカはうねうねとしていて、シオンの性器を扱くようにして動く。ゆっくり一番奥まで入れて、引き抜く。襞がまとわりついてくる。今度は強めに体内のこりこりとした所を突いた。

「あっ、あっ、シオンくんのおちんちん、当たってるよぉ!」
「リッカさん、すごい……このコリコリ、気持ちいい?」
「あ、押しつぶしてる……あっ、あっ、あん、シオンくんに女の子にされちゃうっ」

 リッカは大人しそうなのに情事の時は乱れるタイプだった。嬌声をあげながら、四つん這いになってお尻をシオンのお腹に押し付けてくる。腰を振るたびにお尻の肉がいやらしく揺れる。獣の交尾そのものだった。
 はへっ、はへっ、と悦びの吐息を漏らしながら、リッカは初めての気持ち良さにただただ支配されていた。

「いいよ、メスになって……」
「あーっ、あああああっ、なるっ、なるぅ……め、めしゅになっちゃうからあ、もっと! もっとコリコリ突いてっ、メチャクチャにして……」

 普段だったら恥ずかしがって絶対言わないようなことを連呼するリッカ。乱れて何が何だか分からなくなっている、年上。


「リッカ」


 シオンは自分の気持ちを抑えられなくなって、リッカの名前を呼び捨てにしてみた。すると、心なしかナカがキュンと震えて締めつける。たったそれだけのことが、ただ、愛おしかった。
 





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