「はい、じゃあまずはピース」
「あっ、あ、ぴーす……」

 にこ、と微笑みながら太ももに手をかけて足を拡げながら、ピースサインをする。それを何回か薫は写真に撮った。スマホのフォルダの中に、恥ずかしそうな顔で頬を赤らめながら可愛らしい顔で……でもよだれを垂らして、性器をギンギンに勃起させている勇人。タトゥーが鮮やかに浮かぶ太もも。薫はゾクゾクする。

「はい、次はこの開いた両足を頭の方に持って行って、腰を浮かせて」
「あっ、何このかっこ、はずかしい……」

 それは女性で言う所のまんぐりかえしという体位。勃起したままの性器が重力で垂れさがり、顔に向かって伸びる。先ほどまで性器を咥えこんでいた所も丸見え。ぱく、ぱく、と女性器のように蠢きながら、先ほど体内に残ったままの蛍光グリーンのコンドームを頬張っている。
 薫はそこもしっかり写真に撮った。

「これはね、ちんぐり返しって言うんだよ……恥ずかしいね。赤ちゃんがオムツ替えられてる時みたいな格好だね」
「赤ちゃんじゃない……あ、でも撮ってっ、いっぱい撮って!」

 撮られているだけでも興奮するようで、だらだらと先走りの汁をこぼす勇人の性器。薫はご要望どおり写真をたくさん撮った。あっという間にフォルダの中が卑猥な写真でいっぱいになる。
 ふと、体内に入れっぱなしのコンドームの事が気になった。そっと指を入れて、引き抜く。ナカが締めつけてくるから取るのが大変。ぐり、ぐり、とほじるようにして取る。その刺激でもイッてしまうのか、勇人が甘い声を上げる。
 ようやく取れた。精液で満たされたコンドーム。薫はその口を縛って中身が出ないようにして……じっと見て……いい事を思いついた。

「これも一緒に写真に残そうか……じゃあ、まずはここに結んであげるね」
「え? え、え?」

 先ほど勇人の身体に投げた蛍光ピンク色の二つのコンドーム。縛った所を引っ張って伸ばして、薫は勇人の乳首に結び付けた。両方にぎゅっと結ぶ。勇人からしたら訳が分からない。こんな事をして何が楽しいんだろう。

「あ、意外と重いっ……ねえ、何でこんな事するの、乳首伸びちゃう」
「ザーメンたっぷりコンドームで引っ張られてるね?」
「うっ……恥ずかしいこと言うなー」

 頬を膨らませる所も、乳首にコンドームが結ばれている所も、しっかり写真を撮る。薫はハメ撮りをするのは初めてだが、意外と楽しいものだった。箍が外れてサービス精神旺盛になっている勇人を見るのも良い。
 にこ、と微笑んで、ぴん、と指で乳首からぶら下がるコンドームをはじく。それだけで甘い声をあげて身体を震わせる勇人。性器も、肛門も、普段服で隠しているタトゥーも……何もかも見える恥ずかしい恰好で、乳首に卑猥な重りを付けている。たまらなかった。

「すっごいエッチ……こんなの見てたらボクも我慢できなくなっちゃった。入れてもいい?」
「…………うん」

 こく、と縦に振られる首。それを確認して……勇人の腰に柔らかいクッションをはさみ、ちんぐり返しにさせたまま、お尻に腰かけるようにして反対側を向いて挿入した。

「うぁ!? あ゛あ゛あ゛あ゛! な、なに゛……!?」

 薫の亀頭の上部が強くこすれ、今まで感じたことがないような快感が両者を襲う。これは四十八手の一つ、砧(きぬた)。薫は勇人のお尻をわしづかみにして、腰を強く振る。
 勇人は羞恥心と快楽のはざまで、ただ喘ぐ事しかできない。恥ずかしい、恥ずかしい! どうしよう、メチャクチャ気持ちがいい!
 でも体勢の都合で薫の顔が見えない。次は何をされるんだろう……少しだけ怖かった。

 薫からしたら顔が見えないが……代わりに何もかもしっかり丸見えだ。写真に撮る。いやらしく蠢くひだが、性器を根元まで飲み込んで離さない。性器を口いっぱいにほおばるようにして舐めしゃぶる結合部。腰を振るたびにぷるぷると揺れるお尻。薫はふっ、と微笑んだ。男の征服欲を満たす痴態。

「すごいね、恥ずかしい所全部丸見えだね……どう? 気持ちいい?」
「ア、あん、すっごい! どうしよう、ちょっとこわいのに気持ちいいよぉ……」
「こわい?」
「…………薫の顔が見えないと、不安」

 急に名前を呼ばれた。快楽に流されつつも……ぽつりとつぶやくような声だった。薫からは勇人がどんな顔をしているか分からない。でも無性に顔を見たくなった。
 角度を付けて勇人の弱い所にこすりつける。ローションでぬめったそこは温かく柔らかく性器を包み込む。

「あっ、あっ、あああああ! あたるっ、あたってるからぁ!」

 薫もまた勇人の顔が見えないと少し寂しかった。キミの気持ちよさそうな顔が見たい。両者共に足腰に負担が大きい体位なので……いったん抜くことにした。

「あん、イクイクッ! イッちゃうううう!」
「あ、出た? うーん、やっぱりボクも見えないのは寂しいなぁ……一回抜いて入れなおしてもいい?」

 勇人が射精したようだった。それを見れなかったのも惜しい。気持ちがいいけれど……薫は性器を抜いた。名残惜しむようにしてナカの粘膜がまとわりつく。
 体勢を変えて、お互い向かい合うようにすると……射精したばかりの勇人が抱きついてきた。強く、抱きついてきた。それから甘えるようにして胸に頭をこすりつけて……キスをした。
 ほんのりと勇人の舌から煙草の味がした。それはいつもの銘柄と違う。すっきりとしたメンソール。煙草を変えたのかな。薫はキスをされながらぼんやりと思った。

「ん、ふ、ふーっ、ふ……あ、あ」
「……顔見ながらしよっか」
「ん……うん」

 とろんとした顔でうなずく勇人。何かが薫の胸に宿る。それは燃えるような感情の発露。可愛い。これだからこういう子をメスにするのはやめられない。性癖。それだけではない。しかしそれが何か……今は考えられなかった。

 唇を離す。そっと指でなぞって、もう一度キスをした。それから強く抱きしめる。勇人が腕を背中に、足を腰に絡めてくる。友達のような友達ではないような関係で、お互いの事情なんて何も知らない者同士。でも、すがりついてくるようなその抱擁に、薫は確かに何かの感情を抱いた。

 そのまま、もつれあうように絡まり合うように、何度も何度も色々な体勢で行為をした。コンドームの箱がからっぽになってもまだ止まらなくて、気が付けばナカ出しになっていた。
 びしょびしょに濡れたシーツ。その周りに散乱する使用済みコンドームと袋の残骸。スマホのカメラに収められたたくさんの写真。それから、とろけきった勇人。まだ乳首に結ばれたコンドームはそのままになっている。
 仰向けに寝転がる薫の上にまたがって、お腹に手を置いて一生懸命腰を上下に動かして騎乗位で性器を飲み込んでいた。腰を動かすたびに乳首のコンドームが揺れて、乳首を刺激する。


「あっ、あっあ、あっ、あ゛……ナカにっ、ナカにだしてっ……だして、だしてっ……!」


 ミルクティーの中に落ちて溶ける角砂糖のように、勇人の甘いおねだりの言葉が沈殿していった。





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