勇人がうつむいて何も言えないままでいると、ぐちゅぐちゅに濡れたスウェットと下着を脱がされて性器を握りこまれる。

「あっ! あ、だ、だめ、だめだって! あっ、ああああっ!」
「この先っぽ気持ちいいよね」

 右手の親指と人差し指で輪っかを作られて、性器をしごかれる。ぐちゅ、ぐちゅ、と……外で降る雨に負けないくらいの水音がする。先端の段差を越えて、柔らかく張った亀頭を指でクチュクチュと触られると、勇人は声が止まらなくなる。

「あ、あ……ん、んう……あ!」

 性器を右手でシコられながら、左手でお尻の谷間の襞をいじられる。ベッドサイドに置いてあったローションを手に取って、塗られた。冷たくとろりとしたローションがすぐに馴染む。粘膜が薫の指をおいしそうに受け入れる。

「あれ? 綺麗にしてある」
「さ、さっきトイレで軽く洗った……でも、ちゃんと綺麗に出来てるか自信がないから、ゴムつけて」
「ふーん……こういう事になるって思ってたの?」

 勇人は何も言わなかった。薫はふーっと耳元に息を吹きかけて小さな声で笑った。勇人はそれを振り払って、ベッドサイドから使いかけのコンドームの箱を出して薫に渡す。

「あ、大きさばっちりだ……同じくらいだもんね。そうだ、一緒に着けあいっこしようよ」
「何で俺も着けなくちゃいけないんだよ……」
「シーツが汚れちゃうかもしれないでしょ?」

 にこにことしながら、薫がコンドームを差し出した。勇人は袋の中で中身を端っこに寄せて封を破き、先端の細くなった部分をつまんで空気を抜く。薫の性器にそっとコンドームを乗せて、指の腹で巻き下ろす。薫もまた勇人の性器に同じように装着する。

「何でこんな事やってるんだろう……」
「着けあいっこって新鮮でいいね」

 お互いの性器に着けられた、てらてらと光る蛍光ピンクのコンドーム。子どもみたいな笑み。秘密基地を作ったよとでも言うような顔で、性行為をする為の準備をしている。
 勇人はそう考えると、落ち着かない。そんな勇人の肩をつかみ、ベッドに押し倒す薫は完全に雄の顔をしていた。

「準備ばっちりだね。じゃあもうちょっと後ろならそうか」

 ローションを足されてぐちゅ、と指を入れられる。人差し指で体内をめちゃくちゃに探られる。三十六度五分の温かな肉の筒を、少しだけ冷えた指がまさぐる。

「ん、ああっ、んう……あ!」
「ここ弱いよね。こんなので本当に女の子とエッチできるの?」
「あっ、あ、そ、それとこれとは別!」

 くちゅくちゅと音がするたびに、コンドームが付けられた性器が震える。肌にほのかな赤みがさし、太ももに彫られた髑髏のトライバルタトゥーが浮かび上がる。このタトゥーが入れられた経緯を薫は知らない。ただ、タトゥーの事を聞いた時の勇人の顔は忘れられない。
 寂寥感。一抹の絶望。降りしきる雨に打たれているような、悲しみの表情だった。そして返された言葉。

『好きで入れたんじゃないし』

 一体何があったのか。でも聞いても決して教えてはくれないだろう。聞いたとしたらどうなるか。曖昧にぼかしたような笑みを浮かべてごまかされて……きっと二度と連絡が取れなくなる。
 薫は太ももにそっとキスをした。綺麗に筋肉のついた太ももは、程よく柔らかく温かい。何だかたまらなくなって、両方の太ももをがっしりと掴んで大きく開く。何もかも丸見え。顔を赤らめる勇人の写真を撮って、性器を挿入した。

「ん、んんんん! あっ、あ、あ!」

 ひだひだが薫の性器にまとわりつく。まるで舐めまわされているようだった。奥に進むにつれ、きゅんきゅんと締め付ける。女の子だったらきっと名器。
 薫は正常位のまま腰を叩きつける。勇人のナカが嬉しそうに性器を飲み込み、腰が揺れる。それはもっともっとと言われているようだった。
 結合部の写真を撮った。色々な人と性行為をして縦に割れた所が、おいしそうに性器を飲み込む。写真をたわむれに見せてみる。目を丸くしてスマホを見て恥じらう勇人が可愛いので、たくさん写真を撮った。
 ばちゅ、ばちゅ、ぱん、ぱん、と音を立てて責め立てる。ごりっ、といきなり奥まで入る。

「あ、あ゛、ああああっ、あ゛!」
「すごいね、勇人のここ……ボクのおちんちん咥えこんで吸い付いて離さない」
「そっ……そんなわけ……ないっ! ああああ!」

 身体に反して心の方は全然素直ではない。薫は両手の親指と人差し指で勇人の乳首をねじった。すると、獣のような喘ぎ声とともに身体がのけぞる。

「ん゛ぅうううう! んぉ、おおおっ!」
「乳首いじるとナカがしまって面白ぉい。あー、イキそ……ねえ、出すよ。ここ、しっかり締めてしぼりとって……?」

 耳元で囁かれた声。叩きつけられるような強引ピストン。コンドームの薄い膜ごしに吐き出される濃厚精液。勇人は舌を出し、身体を震わせ、ほぼ同時に射精する。
 薫は射精しながら、勇人の突き出た舌を舐めてれろれろと口の中を犯す。唇を食んで、舌を絡めながら、勇人の体内のコンドームいっぱいに容赦なく出される精子。

「ん、んふ、ふーっ、ふーっ、んむぅ……ん゛うう」
「勇人もいっぱい出たね……コンドーム変えようか」

 ぱちん、と音がして蛍光ピンク色のコンドームを薫が外した。仰向けに寝転がって息を荒げている勇人のコンドームも外される。結んで中身が出ないようにして、勇人のお腹の上に二つのコンドームがぽいと投げられる。精液で作った水風船がエアコンの風でぷる、と震えた。
 薫はそれも何枚か写真に収めた。上気した桃色の肌、太もものトライバルタトゥー、綺麗に鍛えている身体。そこに無造作に放り投げられた精子満タンコンドーム。ぞくぞくとした。

「あ、あっ、あ……」
「やらしいなぁ……あ、固さがだいぶ戻ってきたから、もう一回しよ?」

 ぴり、と封を破かれて装着されるゴム。今度は蛍光グリーン。安全にセックスをするために使われる衛生用品が、薫と勇人の性器に装着される。

「あ、まだむりぃ゛……ああああ!」
「ダーメ……」

 四つん這いになって本能的に逃げようとする勇人。その腰を、お尻を、薫がしっかりとつかんで捕まえた。獣のような体勢で、強引に挿入する。

「ああああああ! あ、うぁ、う゛……ん゛お゛!」
「あー、気持ちいい。勇人のココ、おちんちんおいしいですって言ってるね……こんなカラダじゃもう女の子抱けないね……ボクのメスになってよ、勇人」
「あっ、あっ、あん! め、めしゅ……?」
「そこらへんの女の子よりよっぽどいやらしいから、もうこれはメスだよね。ボクのモノだよ、勇人……」

 頬が熱くなっていく。こんな可愛い女性と見紛うような綺麗な顔の人に……所有物扱いされている。屈辱。でもなぜか心臓がドキドキとする。
 そんな勇人の気持ちとはおかまいなしに、ドチュッドチュッと下品な音を立てて性器が抜き差しされる。無意識に勇人の腰が動く。舌が犬のように出されて、そこからよだれが垂れる。

「ハッ、ハッ、ハァ、ハァ……あ゛! ああっ!」

 カシャ、カシャと勇人の頭上でスマホのカメラのシャッター音が響く。結合部を、背中を、お尻を撮られている。最初は確かに嫌だったはずのそのシャッターの音に、なぜか勇人はどうしようもなく興奮していた。

「あれ、カメラのシャッター音がするたびにナカが締めつけてくるね……撮られてるのに、興奮するんだ?」
「ちっ、違うぅ! そんなわけ……ア! ああああああっ!」

 口では必死に否定するのに、下の口はどうしようもなく素直だった。エッチしている所を撮られると気持ちいい。もっと撮って、と言わんばかりに、体内が薫の性器をきゅんきゅんと締めつける。

「じゃあ、いっぱい色々な格好で撮ってあげようね……勇人はまたチンチンに負けちゃいました記念だよ」

 薫の綺麗な顔に浮かぶ狡猾な相。普段は優しく穏やかな人間なのに、性行為の時は一変する。一体何があったんだろう。勇人のそんな考えが、快楽で塗りつぶされる。頭の中を性器一辺倒にされ、もはや卑猥なことしか頭に浮かばない。
 ぱんぱんっばちゅばちゅ、と太ももとお尻の肉が当たる音。乱暴にがっしりとつかまれてモノみたいに扱われる。首元に噛みつくようにして唇を当てられて、キスマークを付けられた。何か所も何か所も付けられた。

「……出すよ」
「ア゛ッ、イクッ……イク、イグッ!」

 ぴっちりと根元まで性器を飲みこんで、犬の交尾のような恰好でイカされる。それは射精を伴わない絶頂。一番最初に性行為をした時のようなイキ方。いわゆるメスイキである。
 勇人の性器はぱんぱんに張っているのに、まだ射精していない。でも薫の性器が出入りするたびに、一突きごとにやってくる絶頂。

「アッ、だめ、だめ! もうイッてる! イッてるからぁ……あ、はぁっ、はあー、はっ、あ、あ!」
「何回もイッて可愛い……いっぱい出してあげるね!」
「や、やだっ、やだぁ、もう気持ちいいのやだぁ……ア!」

 ゴム越しに吐きだされる薫の精液。先ほど射精したばかりなのに、その量は多く、濃かった。何回もイキながら、奥をぐちゃぐちゃにされて、それでも勇人はまだ射精していなかった。びく、びく、と身体を震わせる。
 薫の性器が少しずつ外に出て行く。それを締めつけて離さない体内のひだひだ。コンドームがそれにひっかかって、外れる。結果、性器は外に出て行ったのに、体内にコンドームだけ残ってしまった。
 もっとしたい。ナカに精液欲しい……身体がそう言っていた。それを見て薫がクス、と微笑む。

「ふぅ、気持ち良かったぁ……でもまだ出したばっかりだからさすがにすぐには入れられないんだよね……いっぱい写真撮ろうか!」
「フーッ、フー……しゃ、しゃしん……?」
「そう。今度はしっかり射精させてあげるからね……もうちょっと頑張ろうか」

 薫は優しい笑みを浮かべながらとんでもないことを言う。柔らかな、雨上がりの空のような爽やかな微笑みだが、言っている事はろくでもない。
 しかし性的に高められて今にも射精しそうな勇人には、もはや判断力が残されていない。言われるがままに写真撮影会が始まった。




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