双子×ビッチ人妻♂

双子×ビッチ人妻♂



※NTR
※少しだけ二輪挿し
※ヤンデレ






 よく磨かれた包丁に真樹の顔が映った。

「こーら、葵くん不器用なんだから。包丁なんて触ったら怪我するぞ」
「あ……っ、ああ……そうだな……」

――――俺は今、何をしようとしたんだ……



 ドッ、ドッ、と心臓の音が速く、大きく響く。真樹には聞こえていないようだが、俺は全身が震えるほどの爆音に眩暈がした。






「葵くん、あーん

 にんじんもブロッコリーも本当は苦手だ。それでも、真樹が楽しそうに差し出してくるから、未だに苦手なのだと言い出せない。

「ふー、ふー……ほれ、あーん

 真樹が食べさせてくれるのなら、俺は泥だって鉄だって喜んで食べる。
 ああ、なんて可愛い人なんだ。こんな幸せな日々が来るなんて、ストーカー時代の俺が知れば涙するだろう。


 苦労してこぎつけた結婚生活。絶対に、絶対に手放してなるものか。


「……真樹、今度さ」
「うん?」
「お前の好きな甘い物でも、食べにいくか」
「まじで! 行く行く、超楽しみ!」

 本当は甘いものだって好きじゃない。元々俺は、肉と米しか食えない偏食家なのだ。

「ああ、楽しみだな」

 不思議なことに、真樹の笑顔を見ていると、自分の嗜好なんて心底どうでも良くなってくる。

 肩からずり落ちているエプロンの紐を直してやって、前髪をかき分け、彼の額にキスをした。10秒くらい口づけながら、自分の心に言い聞かせる。

 研ぎ澄まされた包丁を向ける相手は、彼ではない。あいつだ。
 あいつさえいなければ、真樹を奪われる不安なんてなくなる。




***




 仕事を終えて帰宅する時、少しだけ緊張してしまう。

 先日見た悪夢がどうしても忘れられないからだ。被害妄想だと分かってはいるが、どうしても――玄関の扉を開けたら、あいつが真樹と仲睦まじくしていて、実は真樹の夫は俺ではなくてあいつだった、という夢――唾を飲みこんで、扉を開ける。

「真樹……?」

 いつもなら出迎えてくれる最愛の彼が、なぜか出てこない。部屋の中から声がするから、いないわけではないのだろうが。

 聞こえてくる二人分の笑い声。嫌な汗がぶわりと吹き出し、シャツの背中が一瞬で冷たくなった。

「真樹、真樹……っ」

 鞄を投げ捨てて、小走りでダイニングに足を踏み入れる。するとそこには、この世で最も嫌いな男がいた。

「へえ、紫苑ってパティシエなんだ」
「ええ、日本に帰ってきたのはつい最近なんです。ずっとフランスにいて……ああ、兄さん、おかえりなさい」

 俺と同じ顔、のはずなのに俺よりも余裕があって華やかで、いつもにこやかな弟の顔。真樹を寝取った前科のある男の顔。

 カッとなって鞄を投げつけようとするが、そういえば廊下に投げ捨ててきたのだった。俺は空っぽの拳を握りしめ、出来るだけ冷静な声で彼に問う。

「……なんでいるんだ、紫苑」

 弟はくすくすと嫌な笑みをこぼし、真樹の肩を撫でようとした。そうはさせるかとその手を掴み、強い力で引っ張り上げる。

 俺たちの仲の悪さを知らない真樹は、「葵くん、どしたの? お腹すいてんの?」いつもなら可愛くてして仕方がない呑気な声に、どうしても苛立ってしまう。

「真樹……! お前は俺の妻だろう!? 他のやつに愛想振り撒いてんじゃねえよ! 勝手に男を家にあげんな! そんな無防備な格好で! なんだよ、こいつに抱かれたいのか!? 俺と同じ顔なんだから俺でいいだろ、なあ……っ!」 
「え、わ、悪かったよ、葵くん……でも紫苑、最近越してきたって言うから、この辺の事教えてやってただけで……」
「ふふ、それだけじゃないですよね。真樹さんの夢の話もしたじゃないですか」

 挑発するように顔を近づけてきた紫苑からは、ゾッとするほど甘ったるい匂いがした。

 真樹は甘いものが好きだから、この匂いにつられたのかもしれない。馬鹿馬鹿しい理屈で己を落ち着かせようとしてみるが、纏わりついてくる黒い感情は抑えられない。


「夢なんですって、双子の二輪挿し いやぁ……叶えてあげたいなあ


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