狼に育てられた青年×森に迷い込んだ平凡

狼に育てられた青年×森に迷い込んだ平凡


※抵抗むなしく無様メス堕ち
※ほんのりヤンデレ




 美人の先輩がいる、という噂に惹かれて登山部に入ったことを、俺は今非常に後悔している。

「う……っうううぅ……っどこだよここぉ……みんなぁ……ぐず……ぐずっ……」


 まず美人の先輩はいなかったし(俺と同じように騙された男が大量に入部していた)、女どころか熊みたいな大男しかいなかったし、しかし美人がいないからやめると言い出せるほどの度胸がなかった俺は、流されるままに部活動を続けてしまったのだ。

「うぅう〜〜……っどうしよう……このまま、誰も助けに来てくれなかったら……ひっぐ……う、っくぅ……」


 もう辺りは真っ暗だ。読めもしない地図を頼りに歩いてはいるが、下手に動かない方がよかったかもしれない。
 山というより森、それもかなり鬱蒼とした大樹が生い茂るここらは、日の光を全て遮断しているせいか、まだ夕方なのに真夜中のようだ。

「あ……っうそ、スマホの電源も、あ……ああぁ、切れちゃった……」

 気を紛らわせるために音楽を流していたのがまずかったのだろうか。まあ、そもそも電波が届かない居場所まで来てしまったから、無用の長物ではあったが――――どうしよう、気分が悪くなってきた。高山病か? いや、高校の登山部が上るような山なんだから、そんなに標高が高いわけが……


「はあ……」


 太い木の幹にもたれかかり、枯れ葉の上に座る。ぽつ、ぽつ、と何が空から落ちてきた。頬の上で溶けたそれは、雪だ。

「俺……しぬのかな……」




***




「あれ……?」

 目が覚めた時、まず目に入ってきたのは毛布だ。あたたかいが、随分古いものに見える。毛がごわごわしていて、ところどころ破けている。

「おきた」
「えっ?」
「おきた?」
「え……え? 誰、ですか……?」


 その次に目に入ってきたのが大男。そして木造の小屋らしき壁。

 彫りの深い、美しい青年が俺の事をじっと見つめていた。おそらく彼が助けてくれたのだろう。大柄で強面だから一瞬身構えたが、その声色は優しく、俺を歓迎していた。

「なかま。なかま」
「な、仲間……ですか? 俺が?」
「あたま以外、毛が無い。足が二個で、鳴かない、しゃべる。なかまだ……うれしいな、うれしい」

 照れくさそうにくしゃりと笑った彼は、俺の顔をペタペタと触った。「まだ、つめたい」ぼろぼろの毛布を持ち上げて、座っている俺を包むように巻きつけてくる。

「あ、あの……助けてくれたんですか? ありがとうございます」
「……おまえ、ひとり、か?」
「うん、一人で迷っていました。もう死ぬかと……」
「……そうか、ひとり……」

 彼は話すのが得意ではないのかもしれない。言葉が出てこない、とばかりに悲しい顔をして、くるくると部屋の中を歩き回っている。

 落ち着かない様子で手を彷徨わせて、そして何かを決意した顔で、毛布の上から俺の事を抱きしめてくれた。


「かぞく、増やすか?」




***




「すごいな、ほんとに毛、ないな。おなじだ」
「え、なに!? なんですか、ちょっと、え!?」
「毛、ない……さむい、な。兄弟も、父も、母も、おれだけ毛、ないから……こうしてあたためた。こうして、こうして……」
「ひ……っ! や、やめてください! 何なんですか!?」

 苦しいくらいの力で抱きしめられて、彼は俺の頬を舐め上げた。犬がするみたいに、舌を遠慮なく押し当ててくる。

「ひぃ……っ」
「みんな、寿命。しんだけど。でも、なかま、きた。うれしい、うれしい……今度は、おれと、おなじだ、おおかみじゃない、おんなじ、なかま……」
「え、えぇ……?」

 舌が首まで移動して、さらにその下に行こうとしている。窓の外は大雪だ。目の前には怪しい電波男――――でも、外に出たら確実に死ぬ。こいつといるしかないのか……?


「交尾したら、なかま、もっとふえる……



 前言撤回だ。外の方が、少なくとも貞操の危機はないらしい。


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