青マスタとアカイト
「カイト、居る?」

硝子を数度、指で叩く音にまさかと思って、
窓を開けたらあんまりにも暢気な笑顔。

咄嗟に握ってた枕で殴っても俺に非は無い筈だと思う。

「おまえなぁ〜っいきなり何なんだよ!」

「こっちの台詞だ!カイト泣かしやがって!」

「は」

ぽかんとした顔に腹が立ってもう一回殴ろうとした腕を捕られた。

「カイトが泣いたって何」

「…自分の胸に聞け」

やっと怪訝な顔したカイトのマスターが俺の手を離すなり、チャイムを連打しだすから。

「あーもーうるせぇなぁっ」

勢いで窓を閉めたと同時に、寝室を出て直ぐの玄関へ向かって鍵を外した。

「聞いてみたけど特に思い当たる節が無い」

「おまえ、最近家に居なかったんだろ」

「あ?ああ連休取ろうと思って予定を詰めた」

カイトのマスターは帰宅直後って感じのスーツ姿で、特に甘ったるい匂いもしない、し。

実際こいつがそんな器用だとは思ってない、けど。

「携帯、繋がんなかったのは」

「あー電源入れてると無意識に家に掛けちゃうし…ってそれが原因?」

なんで俺にすらすら話すくせにあいつに言ってやらねーんだ、と溜息をついたところで。

「だってさ、カイト」

背後から聞こえた声に振り返れば、
マスターに連れられたカイトが廊下の向こうでほっとした顔をする。

直ぐマスターと目が合って、反射的に戻った寝室の鍵をしっかりと掛けた。


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