30
気づけたら現行犯で捕まえたのに。いや、でもこれだけでは弱いだろうか。本当にまわりくどいことをするなあ。

「堰くんさあ、最近周りに変な人居ない?」

朝の出来事を思い出していた俺に、野中先輩はこちらを見ないままでそんなことを聞いてきた。何のことを言っているのか分からなくて、「え?」と聞き返してしまった。

「文字通り、変な人。心当たり無い?」

「変な人……ああ、居ます。変と言って良いのか分かりませんけど」

トイレで何度か会った(?)うめき声の人を思い浮かべた。変……だよな?奇妙と言った方が正しいかもしれない。声をかけてしまってから見かけなくなったけれど。

「気をつけた方がいいよ。油断を誘う場所ならなおさら。見張ってるのかも」

詳細を言わなかったのに知っているような口振りだな。先輩はどこまで理解しているんだろうか。もしかして、うめき声の人を知っている?本当にただお腹が弱い人なんだと、このことは誰にも言っていなかった。それが間違いだったとしたら?考えすぎかな……。

「堰」

そこで話が終わったらしい根津先輩に呼ばれて俯きかけた顔を上げた。

「はい」

「安佐凪には俺から言っておく。お前は勉強してこい」

そうだ、今朝のことは生徒会長にも伝えておくべきだろう。些細な事でも報告するようにと言われていたし。隣の野中先輩が会長の名が出たことに驚いた様子を見せたけど、説明するとなると誤魔化しが難しいので気づかない振りをして軽く頭を下げた。

「ありがとうございます」





prev next

bkm







.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -