17
「君かわいいね、お菓子あげるから着いておいで」

「侑哉くん、なんか思ってたのと違ったから、ごめんね」

「あいつが派手なのは見た目だけだって。性格は地味目だから無理無理」

「ぼく、お姉さんとイイコトしない?」

「なんだ、期待したのにつまんねーやつ」

もうやめてよ。
おもちゃじゃない、飾りじゃない。中身と釣り合ってないなんて自分が一番理解してる。
特別じゃないなら普通に、普通にならないと。普通に……。

「大丈夫か」

ひどく優しい声に夢から呼び戻された。
悪い余韻にしばらく呆然として、自分が今寮に居るのだと思い出す。

「……え、と君は」

ベッドにもたれるように眠っていた俺の目の前に、見知らぬ人が屈んでいた。日が沈んでしまっているのだろう、照明も付けておらず暗いこともあって、パーカーのフードを被った彼の顔はよく見えない。

「宗弥健助(そうやけんすけ)」

「ああ、やっぱり」

寮長に聞いた通りだ。

「うなされていたから……勝手に入って悪い」

「いや、ありがとう。起こしてくれて助かった。俺は堰侑哉」

ちゃんと挨拶しようと思ったのに、格好悪い初対面になってしまったな。苦笑しながら握手しようと手を伸ばしたけれど、宗弥はその手を取らず、俺の眼鏡を少し押し上げた。

「無理しなくていい。つらい夢だったんだろ?」

さっきと同じ優しい声に、涙を拭ってくれたのだと分かった。俺は泣いていたのか。








prev next

bkm







.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -