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甘えているのか甘やかされているのか、両方かな、俺を抱きしめた姿勢のままひとしきり、猫のように擦り付いたり頭を撫でたりした後太朗くんは仕事モードで出て行った。
昔からこんな感じだったろうか。甘やかされるのには覚えがあり過ぎるぐらいだけれど、甘える人だという印象はなかった。ごくたまに、テストや部活を頑張ったから頭を撫でてくれ、ぐらいは言われたかもしれない。俺が成長して甘えたくなるような人間になれているということなら、嬉しいな。

「一緒に住むか……深い意味はないのかなあ……」

子供の約束ではないのだからちゃんと考えないといけない。3年の猶予が今となっては重くのしかかってくる。本当に、なんで俺なんだろうか。ああ、太朗くんの前で緊張したことなんてなかったのに。

「侑哉」

思わず頬を押さえていたら、ノックと一緒に抑えた呼び声が廊下からした。健助の声だ。

「起きてるか?」

顔が赤くないだろうか、と一瞬ためらったら重ねて尋ねられたので、反射的に「起きてるよ」と返す。眼鏡はかけた、前髪も下りている、大丈夫だ。

「……入るぞ」

肯定を待ってからドアが開いて見慣れた長身が現れる。おはよう、と挨拶をしたら短い返事と同時に健助は側にしゃがみ込み、俺の頬を包み込んだ。やっぱり顔が赤かったんだな、と理解。

「熱はないか……体調はどうだ?」

「元気だよ。寝起きだから赤くなってるのかも」

なんとなく恥ずかしくて、正直に言えなかった。





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