分け合い


※生存if
彼専属添い寝屋と同じ設定


涼しいスーパーの店内から一歩外へと出れば待っているのはさながら地獄だ。降り注ぐ日差しとアスファルトからの照り返しに、背中には早くも汗がじわりと滲み出した。

「じゃあ溶けないうちに早く帰ろう」

続いて店内から出て来た形兆君の手元へと視線を落とす。そこから微かに伝わってくる冷気もこの暑さではすぐになくなってしまうだろう。



じりじりじりじり。家路を急ぐ私達には変わらず太陽からの熱が届く。背中に滲んでいた汗がついには滑り落ちる感覚がして私は我慢出来ずに彼が持っているレジ袋の中を覗き込んだ。少しでも溶けるのを阻止しようと私が直接放り込んだ氷の中から二本セットのチューブ型アイスを取り出した。彼から帰るまで我慢出来ないのかと言わんばかりの視線を感じるがそんなの私は知りません。袋から取り出したアイスを二つに分割させ、一本を彼へと差し出した。

「一本は形兆君のね」
「おれはいらねえって言っただろう」

購入したアイスは三つ。億泰君のとお父さんのと私の。あと猫ちゃんのおやつも一緒に。あまりの暑さにアイス欲がどうしても我慢出来なくて買いに来たけど、形兆君は自分はいらないと何もカゴに入れずにさっさとレジまで持って行ってしまうから隙を見て彼の分を入れ込むことも叶わなかった。

「ほら、そう言わずにさ。私に恋人と半分こっていう青春体験をさせて下さいよ」

アイスを彼の腕に叩きつけながらそう言えば彼は渋々とそれを受け取った。眉間の皺具合を見るに断る方が面倒な事になると判断したのだろう。うん、賢明な判断。

「やっぱりこの時期はアイスに限るね」
「冬にも馬鹿みたいに食ってるだろう」
「分かってないなあ、こたつでアイスっていうのもまた格別なんですよ」

この暑さで既に柔らかくなっていたアイスはすぐにするすると胃へと収まってしまい、空になった容器を若干の名残惜しさを感じながら見つめた。もう一個買っておけば良かったなんて言えばまた彼は呆れるんだろうな。ちらりと隣を見てみると大きい手にすっぽり収まったアイスをしかめっ面で食べている彼の姿が何だか可笑しくて頬が緩んだ。

「億泰君リクエストのアイスが無かったけど別のやつでも許してくれるかな?」
「あいつは甘けりゃあ何でも良いんだろ」
「お父さんの、とりあえず無難なバニラにしたけど好きかな?」
「……さあな」
「じゃあ帰ったら聞いてみようね」

そういった私に彼は返事こそしなかったものの少しだけ頷いたような気がした。

空になった容器をそれが入っていた袋へ入れ、同じように食べ終わったゴミを入れるようにとの意味で彼に向けて袋の口を開けて示す。けれども彼はそれをひょいと私から取り上げた。

「ゴミくらい私が持っておくよ?」
「いや、いつもみたいにすっ転んでも平気なように手空けとけ」
「いつもって……そんなに転びませんー」
「今朝もうちに入って一歩で転んだ奴の言う台詞じゃあねえな」
「あれは億泰君が靴脱ぎっぱなしにしてるのが悪いの。それに、ほら! 形兆君こそ両手塞がってたら転んだ時に危ないでしょ」

うわ、鼻で笑った。ふん、苦し紛れに言ったことぐらい私だって分かってますー。形兆君は大丈夫ですよねー、私と違って!

「……じゃあこうしよう。やっぱりゴミは私が持つ。形兆君はレジ袋、反対の手に持って」
「なんだ?」
「いいから早く」

「ほら、これで万事解決じゃあない?」

フリーになった熱くて汗で少しだけ湿っている彼の手を握る。アイスのおかげで冷たくなっていた私の手はきっと丁度いい。

「こうしてれば私が転びそうになっても形兆君が引っ張りあげてくれるでしょ?」

逆に万が一形兆君がそうなっても私が助けてあげられるし。

「……おまえにおれを引くだけの力があるとは思えんな」
「そんなことないよ! これっぽっちでも私の引っ張る力が加わったら形兆君はきっと踏ん張ってくれるよ」
「はあ……それよりも結局二人して両手塞がるじゃあねえか」
「あっ!……まあまあ、それはそれってことで――」

ほらお家帰ろう、形兆君。みんな待ってるよ。



2021.08.22
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