SSS
ついったーログ。ジャンルカップリングゆりばらノーマルごちゃまぜ




彼女が姿を消してからどれ程の時間が経っただろう。いつかのように山の頂上へ足を運んでも彼女はおろか人の気配すら感じられなかった。閑散とした岩場に申し訳程度に咲いたいくつかの小さな花。柔らかく摘んだ所で、それらはいたずらな風に攫われていった。
(TOV ユリジュ)




2012/01/26 22:25 (0)



眠りから目覚めると隣に彼はいなかった。無駄にシーツをまさぐって、ありもしない彼の体温を探す。ユーリが長い任務に出たのは昨日のことだった。慣れた彼の残り香を胸に入れながら、まるで目覚めないかのように瞳を閉じた。
(TOV ユリジュ)




2012/01/26 22:25 (0)



彼の瞳を見ていると何とも言えない気持ちになる。おぞましいようで美しいようで、叫んでいるような黒のそれ。
「どうした」
「あなたの目を」
「なに」
「…たべてしまいたいわ」
ああそうか。これは結局愛なのだ。愛は時に恐怖を伴って存在している。
(TOV ユリジュ)




2012/01/26 22:24 (0)



隣に座るこの人はとても綺麗だった。女性のような外見からハスキーな声が流れ出る様には見覚えがあると思い、脳内を探してみて該当したのは自分だった。そういえば同じことをよく言われるものだ。無駄に思考してしまったと手に持つココアをすすり、再度横の彼に目を向けた。昔話の途中だった。
「今の立場、後悔してる?」
「いえ」
「そうか。俺も満足してたよ、中学生まで」
「どういうことですか」
「満足出来ない状況になったんだよ。あいつは人を惹きつけるから」
彼の手にある缶コーヒーが重たく揺れる。彼は呆れたように微笑んだ。
「幼なじみって面倒くさいよな」
(イナゴ 風丸+蘭丸)




2012/01/13 02:29 (0)



因果はいつも、体に歯形をつけてくる。何故だと痛みを訴えた所、彼は愛らしい笑顔でこう言った。
「新十郎のこと大好きだから、皮膚まで食べたいと思うのだっておかしくないよね」
あと新十郎は歯形も爪痕も付けないし。舌なめずりをした因果を横目に思う。彼の綺麗な体に、痕をつけては勿体無い。
(UN-GO 因新)




2011/11/12 23:05 (0)



それは世間的に言えば暴行の類だった。愛がある訳では無い、本当にただひたすらぶつけられる力と殺意。口に広がる血の味に慣れる自分と、そして彼。互いが互いを嫌い、憎み、殺そうと思考する空間の中で、何故か視線だけは交わうのだった。
「ああうぜえ、うぜえ。死ねよ」
「生憎だが無理な相談だ」
「歯を折って舌を抜いてやる。顔貸せよカス野郎」
「下品な物言いだな」
彼は頬を殴り、腹を蹴り、首を締める。自分は同じことを彼に返す。非生産的な行為だった。何の合図もなく始まり、唐突に終わる。憂さ晴らしにはならなかった。しかし彼と共に有る時、その行為を行うことが何より自然に思えた。
(ぬら孫 茨しょう)




2011/10/18 01:00 (0)



夕刻の頃、畳の端で静かに涙を流す柳田を見つけた。橙色の光が差す中、消えそうな存在感で柳田はそこに有った。何を思って泣いているかは大体見当が付く。彼が泣くのは彼の人を想う時だけなのだ。さめざめと泣くというよりも、ただ眼球から水分を落としているような、そんな涙の流し方。
自分が訪ねてきたことに気付いたのか、しかし彼は動こうとはしなかった。声も立てず、風にすら反応せず、眠るように泣いている。持っていた扇子を薄く畳み、握るとそのまま傍へ腰を下ろした。
「いい、夕日だねえ」
彼は何も言わない。衣擦れの音がした。
「だがちょっと、眩しい」
肩に重さを感じ、視線だけ其方にやると、影を纏った柳田の頭が預けられていた。
「…師匠」
「何だい」
「あの紅色の、燃えるような光が見えますか」
「ああ」
柳田が咳き込む。体を震わせたのだろう、振動が伝わってきた。
「似ているのです。あの人が笑む時の、唇のそれに」
「そうかい」
「はい。優しく、意地悪く、欲にまみれたその顔で、あの人は笑っていたのです。ずっと御側で見て参りました」
柳田の手が、自分のそれに触れた。体温を求めているのか。死人と変わらぬ冷たさを持っていると、知っているだろうに。
「あの人の一番ではないと、わかっておりました。それでも、いっとう好きだったのです。愛にも、憎しみにも似ていました」
この台詞を何度聞いただろうか。彼は記憶力が一般のそれよりも弱いのかもしれない。同じ言葉を吐く度に、同じ様に泣いて、同じ様に傍に寄る。それは習慣にも似た反復だった。
柳田の涙が手の甲に落ちた。指が絡む。骨と似ていると、毎度思うのだ。
「もうお休みよ。夜が近い」
「夜に眠るなんて、ヒトのようですね」
「真似てみてもいいじゃないか。あの紅色もそろそろ眠るよ。あんたも一緒に寝ておしまい」
柳田が子供と同じ仕草で頷く。吐息の感覚がした。
これをあと何度繰り返せば、彼は落ち着くだろうか。きっと彼の人が元の通りに帰るまで、全くずれぬ周期で同じことをするのだ。だから今回も、自分は柳田の指を握り返さない。何故なら彼は、何かを求めてすがっている時が、一番美しいと思えるからだ。美しいものを嫌う程、自分は人外ではないのだ。
(ぬら孫 圓柳)




2011/10/17 01:42 (0)



「あんたなんて嫌い」
「ええ、そんな寂しいこと言わないでよ」
「こっち見んな」
ふわふわ浮く首が腹立たしい。着物の裾を翻して背を向けたら、耳元で彼の声がした。
「美人を前に、どんな男が目を背けられると思う」
ああこれだから。首が飛ばせるってほんと卑怯だ。
(ぬら孫 首毛)




2011/09/23 01:28 (0)



「兵助くんは字が綺麗だねえ」
宿題を教える最中、斉藤はそう呟いた。特に答えることもないので無言でいると、更に彼は言った。
「髪も顔も体も綺麗で、字もなんて。兵助くんってすごいね」
何がすごいのかさっぱりわからなかったけれど、斉藤に褒められることが、俺は嫌いじゃなかった。
(忍たま タカくく)




2011/09/23 01:27 (0)



俺はこいつが嫌いだ。顔はいいし背は高いし優しくて馬鹿で。殴っても叩いても笑ってるだけだった。どうしても表情の変化をさせたくて唸っていると、ぽんと肩を叩かれた。
「帰ろう、佐久間」
ああそうだキスはどうだろう。思う前に体が動いて唇が重なって、ざまあみろ。お前の顔は真っ赤だ!
(イナイレ 佐久源)




2011/09/23 01:27 (0)

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