カプ要素なし
援交の奏くん
今日は寒いから、ニット帽被って、学ランの下にはパーカー着て被る。頭二重警護だ。
自販機でコンポタ買ってクラスに戻ると、大翔がでれでれに電話してた。その後ろの席に座る。
「ねぇねぇ次はいつ会える?えー、うん、うん…わかったぁまたねー。」
「うへ」
ほんとーに大翔はしんじらんない。
こないだ援交したオッサンとまだ続いてンだって。きもい。大翔がオッサンとの電話を切る。
「また会ってんのオッサンと。」
「うんー。だってお金くれるしー。オッサンのおかげであいほんに出来たんだぜー?」
そう新しく買った携帯をちらつかせる。いいな…いやいやいや、よくねーよくねー。
「オッサンとかマジ無理だわ…あいほんでも無理だわ。」
「奏くんはメンクイだもんにぇー」
そう大翔が俺の机に寄りかかる。伸びする腕は萌え袖。萌え袖にするため、わざわざでかいカーディガン探したあたり、大翔はあざとい。
「だってオッサンだぜ?きもいだろうよ、しかもオッサンに体触られるとか無理すわ。」
「んーでもオッサンめっちゃえっちうめーの。おれ指だけでイかされそーになっちゃったぜ?」
だからやなんじゃん。よくブスが不細工連れてるけど、あーゆーのに限って夜凄そうじゃん?やじゃん?なんか怖くない?
「やだやだ。男なら俳優くらいイケメンじゃなきゃやだ。女もアイドルくらいかわいくなきゃやだ。一緒歩きたくねーもん。」
「奏くんぜってー結婚できねーよ、それ。」
大翔が呆れた顔で鏡見てる。うう、おれもわかってっけど、きもいもんはきもいんだよ。
*
「はーあー」
町を歩きながら溜め息。最近大翔つれねーし。さみしーなカノジョほしーな。
ちなみに俺のタイプはー男女とも黒髪でスラッとした綺麗系。気が強そうだと尚よし。
「そんな天使、いねーかなぁ。」
そんな溜め息を吐くと、突然路地裏から出てきた人とぶつかる。
「んだよっ、ってーなぁ!あ…」
罵りながら相手の顔を見た瞬間、
「っいた…」
…長い黒髪はまさに烏の濡れ羽色。それにあつらえたような、紺のセーラー服が清楚な印象を与える。そこから伸びる足は黒いソックスに包まれ片方の足は包帯が巻かれている、そして、その顔、いや、そこに切れ込みを入れて覗く瞳。きっとつり上がった目尻に、薄く翠がかったような宝石のごとき瞳、それが歪められて傷ついた足を見つめている。
恋に落ちた。りんごーん!
「大丈夫ですか!?おケガは!?」
「え、あ…」
さっと手をさしのべるエセ紳士おれ。カノジョが口を開こうとしたとき、路地裏から男が数人表れた。
「なんだよー逃げなくてもいいじゃねーか。ただ遊ぼうってだけだろうが、なぁ?」
そんでカノジョがびくっと肩を震わせる。ほうほう、こいつらか、カノジョが路地裏から飛び出してきた理由は。カノジョを自分の後ろに庇う。
「下がってて。」
「え、あ…!」
*
「ありがとうございました…」
「いえいえー!そんなー!」
あのあとは、石投げたり姑息なことして辛勝して、今は二人で公園のベンチ。カノジョがおれのケガしたとこハンカチで拭いてくれる。なにこれー青春映画みたいー超ときめく。
「あの、」
「ん?」
「強いんですね、かっこいい…」
そう頬を染めて囁かれる。
ずきゅううううううううううううううううううううんっっっ
そんな、そんな、どうしよう、心臓痛くなってきちった。
そのあと、メアド交換して、デートの約束してバイバイ。
しあわせだーしわわせすぎるーきゃはーもーもらったハンカチぜってー洗濯しねーうはー!
俺がなんども振り返って手を振ったカノジョが呟いたことは、聞こえなかった。
「レイパーは負い目あるから便器にしやすかったのに…誤算だな。まあ、ああいう馬鹿も可愛いか。」
そう妖しく微笑んだ。
おわり