典許
夜空に流れる天の川(典許編)
典韋と許チョは七夕飾りに短冊を括り付けた。
それぞれの願いは違うものであろうとも叶って欲しいと思う。
「なあ、許チョ…」
「どうしただ、典韋?」
「許チョは俺と一緒にいて楽しいか?」
「ああ…楽しいし、典韋と一緒に居られてオラは嬉しいだ」
許チョは笑顔を浮かべて典韋の問い掛けに答えた。
「もし、俺と許チョが離れて過ごす事になったらどうする?七夕の織り姫と彦星のように一年に一度しか会えなくなったら許チョはどうする?」
「そんなの嫌だ。オラは典韋が一緒にいたからずっと頑張ってこれたんだ…」
「許チョ…」
「一度に一度しか会えなくなるなんて絶対に嫌だ。典韋、遠くにいかないでくれよ」
「ああ、俺はお前に黙って遠くにはいかない…」
典韋は許チョを抱きしめる。
「俺も同じ気持ちだ。許チョが俺のしらない処に行ってしまったらと思うと辛いんだ…」
「て、典韋…どうしただ?」
「お前は可愛いからな。誰かに取られてしまうかもしれない…」
「オラは典韋以外の人と恋仲になる気はないよ。典韋が大好きなのに他人に気持ちが揺らぐ訳がないよ…」
「許チョ…」
許チョは典韋の背中に腕を回しその身を寄り添う。
「織り姫と彦星もオラ達のようにずっと一緒に居られたら幸せだろうな…」
「ああ、そうだな…」
ずっと一緒に居られる幸せが続けばいい。
そうしたら寂しい思いはしなくて済むのに。
密かに短冊に願った思いは確実に稔らせる。
それが永遠ではなくても現在(いま)一緒に居られる時を大切にしていきたいと二人は思った。
「許チョ…一緒に何処かで食事しないか。奢るからよ」
「本当か、典韋大好きだ!」
「決まりだな…じゃあ行くか」
「うん!」
二人は七夕の夜は一緒に楽しい時を過ごしたのであった。
終
お題配布元:ALLODOLA
http://id17.fm-p.jp/313/allodola1000/
操仁
夜空に流れる天の川(操仁編)
「今日は七夕か…」
曹操は七夕飾りを目にして呟いた。
古くからの伝統を現在に伝えるのか笹の枝に沢山の飾りと短冊を見ると思わず笑みが零れる。
幼い頃は信じてやまなかったが大人になるとそれさえも忘れてしまう。
曹操は願う事もしない、欲しいものは自分の手で得ていた。
だから七夕伝説も偽りであろうと思っていた。
彼と一緒にいる時が増えてからその伝説を信じてみたくなった。
本当に自分らしくもない。
「殿…こんな所においででしたか」
「子孝…待ってたぞ」
「本当に綺麗な星空ですな。ずっと輝きを失わない美しさに私は惹かれてしまいます…」
「子孝は七夕の伝説を信じているか?」
「ええ…大人になってもこの伝説は信じてみたくなります。一途な恋を稔らせた二人が一年に一度だけ会う事を許された日。私と殿が離れ離れになったとしても私は貴方の元に出向きます…」
「会う事が出来ないかもしれぬのにか?」
「私は貴方を愛してます。愛しい人を命を掛けて守ると誓った。愛しぬくと願ったから…」
「子孝…嬉しい事を言うな」
「殿はもし願いが叶うとしたら何を願いますか?」
「そうじゃな…儂は子孝が側におればいい。子孝を離したくはない」
「そうですか、良かった。私と殿の願いが同じで。嬉しいですぞ…」
「いつまでも儂の側でいてくれ子孝…」
「ええ、殿の願いは私の願いでもあります。ずっと貴方の側におります…」
曹仁は曹操に抱き着いた。
この温もりを失いたくはない。
この満天の星空に誓う。
ずっと一緒に生きていく事を。
「…孟徳、愛してますぞ」
「儂も子孝を愛しておるぞ…」
二人はゆっくりと唇を重ねていく。
愛しくて大切な人といる幸せを感じたのであった。
終
お題配布元:ALLODOLA
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惇淵
夜空に流れる天の川(惇淵編)
満点の星空の下の元、二人は寄り添って星空を見ていた。
どんなに忙しい日々を送ろうとも夜になれば一緒に居られる時間を大切にしていた。
「今日は七夕だったな。天の川が綺麗だ…」
「本当だね…ねえ、惇兄…」
「何だ淵?」
「もし、天の川の伝説のように俺達が別れ別れになって会えなくなったらどうする?一年に一度しか会えなくなったら惇兄はどうするんだ…」
「そうだな、俺だったら。一年に一度しか会えないと言う決まりなんて破ってでも俺はお前に会いに行く…」
「惇兄らしいな…」
「淵は平気か。俺と会えなくなるのは?」
「嫌だよ、俺は惇兄の側から離れるなんて絶対に嫌だ…」
「ふっ、可愛い奴だ…」
夏侯惇は夏侯淵を優しく抱きしめる。
こんなにも引かれ合い、愛し過ぎているのに別れ別れなんて出来る訳ない。
「惇兄、俺も別れ別れになっても惇兄の元に行くから…」
「嬉しい事を言うな…」
「だって、俺は惇兄が、元譲が大好きだから…」
「俺も妙才を愛してる」
「元譲…」
二人はゆっくりと唇を重ね愛情を確かめあったのであった。
終
お題配布元:ALLODOLA
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羽飛
夜空に流れる天の川(羽飛編)
満天の星空がまるで大河のようで美しい夜空を見上げながら張飛は酒を飲んでいた。
そして張飛の隣には関羽が寄り添い同じ酒を飲み交わしている。
「兄者…綺麗な星空だな」
「そうだな…」
「夜空を見ながら酒を飲むのは最高だ」
「そう言ってくれると誘った甲斐があるな」
「珍しいな、兄者から一緒に飲もうと誘うなんて」
「たまには飲みたい時があるのだよ」
関羽は酒を飲みながら張飛を見る。
「今日は七夕だな。織り姫と彦星が一年に一度会う事を許された日か…素敵だな」
「一年に一度か…拙者は翼徳と毎日一緒に過ごしていたいな」
「兄者、恥ずかしい事を言うなよな…」
「翼徳は拙者と毎日会うのが嫌か?」
「そんな事ない。兄者と一緒にいるのは嬉しいが恥ずかしいんだよ」
「相変わらず照れ屋だな」
「うっさい。俺は兄者とどんな事があろうと一緒だ。兄者が俺を求めるように俺も兄者を、雲長を求めてるんだ…」
「翼徳…」
張飛は関羽に抱き着いた。
関羽も張飛の身体を抱きしめる。
「雲長…俺と離れる事になっても俺の事を想ってくれよ。俺も雲長の事を想うから…」
「ああ、翼徳、約束する…拙者はずっと翼徳を想うと」
「雲長…ありがとう」
「翼徳、愛してるぞ…」
「俺も雲長を愛してる…」
二人は抱き合いながらゆっくりと唇を合わせたのであった。
終
お題配布元:ALLODOLA
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典許♀
ある日の休日、許チョは久しぶりに街に出て露店巡りを楽しんでいた。
見た目はぽっちゃり体型な許チョは小さな身体では思えない程の大きな胸を持っていた。
普段は活発に動けるような衣装を纏っていたが、今日は休日なのか珍しく女性物の服を着ていた。
やはり許チョも年頃の女の子だろう。
髪飾りや耳飾りを販売している露店に立ち寄っていた。
自分には派手なものは向かない。
見た目でも派手ではないものを選んでいた。
「う〜ん、どれが良いんだろうか…」
許チョは耳飾りを見ながら呟く。
任務中では邪魔にならないものを選んでいるのだが、やはり多種多様で様々な耳飾りがあって目移りしてしまう。
「何を悩んでいるんだ?」
許チョは声を掛けられ、振り向くと典韋が立っていた。
「なっ、典韋、びっくりした…」
「許チョ、お前…その格好…」
典韋は許チョの姿にドキドキしていた。
チャイナドレスに身を包んでいる許チョ。
その巨乳や微かに露になっている太股に目がいく。
「今日は休日だし、任務もないからたまには女の子らしい格好をしたんだが、やっぱり変かな?」
「いや、凄く似合っているぞ…」
「そうか。ならたまにはこんな格好もいいだな…」
許チョは嬉しそうに笑う。
いつもは男っぽい格好でいる許チョに典韋は見とれてしまう。
(やばい、可愛い…。抱きしめて連れて帰りたくなる)
「なあ、典韋…」
「な、何だ許チョ?」
許チョは典韋に近づくと問い掛けた。
「実は耳飾りを選んでるんだけどどれが似合うかな…」
「そうだな…これなんてどうだシンプルだが、青い石が綺麗だぞ」
「あっ…本当だ、これなら小さいし。普段でも付けられそう」
小さい青い石が嵌め込まれた耳飾りを許チョは見ていた。
「なんなら、俺が買ってやろうか?気になるんだろ…」
「えっ、でも…」
「遠慮するな…いつも一緒にいるんだ。たまには俺がお前に買ってやらないとな」
典韋は店の男に耳飾りの代金を払った。
そして典韋は許チョに耳飾りを渡した。
「あ、ありがとう典韋…」
許チョは典韋から耳飾りを受け取り嬉しそうに笑った。
許チョは早速、耳飾りを耳につけた。
「に、似合うかな?」
「ああ…可愛いぜ、許チョ…」
「あ、ありがとう…」
許チョは恥ずかしくなり顔を伏せた。
顔だけではなく耳まで真っ赤に染めて恥じらう姿に典韋は思わずその身体を抱きしめた。
「!!」
「許チョ…可愛いぜ。なあ、もしよかったら俺と付き合わないか?」
「えっ、それって…」
「ずっとお前を見ていたし一緒にいたが、今日は改めて許チョが可愛いと思った」
「典韋…」
「許チョ、俺で良ければ付き合わないか。恋人同士として」
「オラでいいのか?こんなぽっちゃりな体型だし、美人でもないけど…」
「俺は許チョだから好きだし、付き合いたいと思っている」
「典韋…」
「駄目か?」
「嬉しいよ、典韋…」
許チョは典韋の背中に腕を回した。
「オラ、典韋となら付き合ってもいいよ」
「許チョ…」
「今日からオラ達は恋人同士として付き合っていくんだな」
「ああ…」
(柔らかな胸が当たってる。なんて気持ちいいんだ…)
「なら、今度はオラが典韋が好きなものを買ってあげるだ」
「そうか…なら俺は許チョが側にいるだけで充分だ…」
典韋は許チョに軽く口づけを落とすと直ぐさま、許チョを連れて露店を後にした。
「何処に行くんだ、典韋?」
「何処って、俺の屋敷だ…」
「あんまりその身体を他人には見せたくないんでね」
「ちょ、何処見てるだ。典韋のエッチ!」
「なんとでも言え、俺は独占欲が強いんだ、覚悟しておけ…」
「ひっ、やああ〜!」
典韋は許チョに呟くと、典韋は自分の屋敷へと許チョを連れ込んだのであった。
その後、許チョは典韋の猛烈なハグに襲われたとかないとかその真実は本人達しかわからなかった。
終
典許
曹操の護衛がない時は、暇を持て余す。
典韋は身体を鍛える為に鍛練は欠かせないと鍛練場に向かう。
だが一人では鍛えるには限界があった。
典韋は同じ曹操の護衛である許チョを誘う。
「許チョ、一緒に鍛練をしないか?」
「典韋…オラはいいよ」
「何を言うか、鍛えておかないといざという時は殿を護れないぞ!」
「疲れるから嫌だ〜!」
「鍛練が終わったら何か奢るから付き合え…」
「わかっただよ…」
典韋は許チョを連れて鍛練場に向かった。
食い物には目がない許チョを釣るには一番な方法なんだが。
(たまには俺にだけを意識して欲しいんだが…)
典韋は密かに許チョを好いていた。
あのぽっちゃりした体型で意外に可愛い仕種をするのだ。
だからたまに抱きしめるとあの柔らかさが堪らないのだ。
周囲がどう思おうと典韋は許チョが側に居れば幸せであった。
「典韋〜、早く来いよ。早く鍛練しよう〜」
「ああ…」
典韋は急いで後を追いかけた。
それから二人は鍛練に励んでいった。
鍛練に励んだ二人は大量の汗をかいたが久しぶりに動いた為かすっきりした様子であった。
「典韋、鍛練に付き合ったんだから何か奢れよ〜」
「ああ、わかった。お茶と肉まんでいいか?」
「オラ、大好きな食べ物だからいいよ」
許チョは笑顔を浮かべた。
典韋はその笑顔を見て見とれてしまう。
「…典韋、典韋、どうしたんだ?」
「いや、何でもない。今持ってきてやるから此処で待ってろ…」
「あっ、うん…」
典韋はそう言い残し、許チョを残して厨房に向かった。
(やばい、また見とれてたなんて。やっぱり許チョは可愛いな。あの身体を抱きしめて触れていたくなるな…)
典韋は照れながらも厨房に入ると二人分のお茶と肉まんを用意してもらい許チョの元へと向かった。
「待たせたな許チョ…」
「ううん、典韋、顔が赤いぞ?」
「何でもない気にするな…」
「わかったよ…」
「ほら、お前の分だ」
「ありがとうな、典韋…」
典韋は許チョにお茶と肉まんを渡した。
許チョは嬉しそうに笑いながら受け取ると早速、待ちきれなかったのか肉まんをほうばる。
「うまいだ〜、やっぱり肉まんは最高だな」
「そうだな…」
許チョにつられ典韋も肉まんをほうばる。
ジュワリと肉まんの味が口内に拡がる。
その肉まんを味わいながら典韋は隣にいる許チョを見る。
許チョは笑顔で肉まんをほうばり、幸せそうな笑顔を浮かべている。
そんな姿を見て典韋はクスっと笑った。
「許チョ…」
「何だよ?」
「口元にお弁当がついているぞ…」
典韋は許チョの口元にゆっくりと近づくと唇を重ねた。
「うっ、んん…んう〜」
典韋は許チョの唇を舌で軽く舐めてゆっくりと唇を離した。
「なっ、何をするだ!」
「何って食べかすを取ってやっただけだろ…」
許チョは恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めた。
その仕種が可愛いと思った。
「オラ、恥ずかしいだよ…こんな事」
「嫌だったか?」
「そんな嫌だなんて…典韋にされるのは嫌じゃなかった」
「許チョ、お前…」
「オラ、典韋の事が好きだから」
「許チョ…!」
典韋は嬉しくて思わず許チョを抱きしめた。
「俺も許チョが好きだぜ!」
「典韋…」
典韋の温もりを感じながら許チョは更に顔を真っ赤に染めた。
互いの気持ちを知りさらに嬉しくなった。
「許チョ、これからは俺の事を思ってくれたら嬉しいんだが」
「オラが典韋の事を思っていれば嬉しいのか?」
「ああ…」
(やはり恋愛よりも食い気か…)
「なら、典韋もオラの事を思ってよ」
「ああ、俺はずっと許チョを想っている。好きなんだ」
「だったら、想ってあげるだよ」
「許チョ…愛してる」
典韋は許チョの、その言葉を聞いて再び唇を重ねたのであった。
終
操仁
夢を描くのは人に生まれたから。
自分も人であったら良かったのに。
羨ましかった貴方が。
どうした自分は無様なんだろう?
貴方の傍に居られたらどんなに良かったのに。
苦しみ悲しみ痛み全てを分かち合えたら良かったのに。
それさえも出来ない。
だから別れが来る時、貴方は私を想い涙を流すでしょう。
そんな姿を見たくはない。
ただ貴方の為だけに。
自分は貴方に誇れる武将として生きなくてはいけない。
「子孝…」
「どうしました、殿?」
「お前はどんな事があろうとも儂は子孝だけを愛しておる」
「殿…」
嬉しかった。
その一言があれば悔いは無い。
「私はいつまでも貴方の傍に…」
この世界が終わりの時が来ても私は最後まで貴方の傍に。
「子孝、愛している」
「孟徳、私も愛してます」
私は貴方の為ならこの命差し出しても構わない。
曹仁は曹操に優しく微笑んだのであった。
終
ホウ仁
…昔から
何かを望む前に
欲しかったものは
何でも手に入った。
そんな俺に人の気持ちはそうでないと
教えてくれたのは
彼女だった。
『子孝…私、結婚することになったの。よろしければ是非とも式にいらして下さい』
好きだった彼女(おんな)が全てを打ち明けた。
だが────
俺が彼女を愛したように彼女は他の男を愛した。
彼女を忘れようと
その後も数えきれない数の女性と関係したが満たされることはなくもう二度とあんな風に誰かを愛することはないだろうと────
そう想っていたはずだった…。
「曹仁、目が覚めたか?」
「─────……っ」
「よく眠っていたので声をかけなかったが、たまには空気を入れ替えないと思ったが寒いなら窓を閉じた方が良かったか?」
「いや…構わん、それよりホウ徳…」
「何だ?」
「こっちに来い…」
ホウ徳は言われた通りに曹仁の元に来る。
「どうした?」
「もっと近くに来てくれ…」
…なのにまさか、こんな男相手にここまで本気になるとは。
本当に人の気持ちはわからないものだ…。
曹仁が口づけをするとホウ徳も応えた。
与えられる快楽に喜びを覚えて更に欲しいとホウ徳に媚びると彼は優しく応える。
この肉体は容易く手に入る事はできた。
それでも本当に
欲しいものはまだこの手には入らない。
「ホウ徳、少しは遠慮したらどうだ」
「何です、いきなり」
「激しすぎるぞ…」
「それほど若い証拠と思うが」
「加減しろ…腰が痛くて敵わん」
「せっかく二人きりなんだから雰囲気を大切にしたいんだが」
「野郎同士が雰囲気を気にする方がおかしい」
「二人っきりの時ぐらいはもっとこう…甘い雰囲気を感じたい」
「本気か…」
「でも貴方が求められるのは好きです」
なかなかしない曹仁がホウ徳を誘ったのだから余計に歯止めが出来なかった。
「それは…その」
「また貴方が誘って下さい…」
「全くお前と言う奴は…」
曹仁が溜め息をついた。
求めれば求めれば
ただ笑って受け入れる人形じゃないんだ。
それが偽りのない笑顔で曹仁を受け入れてくれる。
それがホウ徳の愛情の形だと言うのならそれでもいい…。
それでも俺は願う
ホウ徳…
お前とのこんな時間がずっと続けばいいと切に願う。
この幸せが
永遠に続きますように…。
終
劉飛
(現代パロ)
明るい日差しに照らされた部屋で彼は安らかに眠っていた。
美しい水色の瞳は、白い瞼によって閉ざされ開け放たれた窓から入ってくる風が彼の鳶色の髪をさらさらと揺らした。
庭に美しく咲き誇る百合の香りが漂う。
床に錯乱した紙が晴れた空へと舞い上がっていった。
「翼徳…」
観葉植物の多い室内を床に錯乱するものを踏まないように歩く。
ようやくたどり着いた寝台の上で眠る程好く日に焼けた陶器のような彼の頬に触れると彼の睫毛が揺れた。
ベットの脇にひざまずき、美しい手の甲に唇を押し当てる。
忠誠の証。
そして、私の独占欲ゆえの所有の印。
まだ恋愛に不慣れな私には貴方を独占する権利などないとは思うけれど。
それでも。
この思いを伝えることはできなくてもあきらめることなどできない。
この思いは…捨てられない。
ベッドに片足を乗せて身を乗り出すとギシッ、とベッドが軋んだ。
眠っている彼の、薄く開いた唇にそっと唇を重ねる。
一瞬だけ、触れ合う唇。
昔からの習慣。
誰も、知らない。
彼の額にかかった髪をかきあげ彼の耳元で囁く。
いつもと同じ、朝の風景。
「おはよう、翼徳…」
「おはよう…玄徳…」
ああこの時が私にとって幸せなのだと感じる時間なのだと実感した。
そして目覚めた張飛にゆっくりとおはようのキスを落としたのであった。
終
羽飛
(獣化ネタ)
張飛が獣化してから随分とたったある日の事。
関羽は張飛に似合う首輪を密かに探していた。
やはり今の姿のままでは外には自由に出歩く事もままならない。
それに一応は、保護という事で関羽が張飛を世話している。
張飛にとっては自由にならない不満や酒が好きな時に飲めないのだから。
それに張飛は関羽とあまり一緒にいたくない理由があるようだ。
「翼徳…ただいま」
「お帰り雲長…帰ってそうそうだが悪いんだけどこれを外してくれないか?」
張飛が言うこれとは張飛の片腕に繋がれた鎖であった。
「何を言う、鎖に繋がないと逃げるではないか…」
「俺は飼い犬じゃないんだ。幾らなんでも鎖で繋がなくてもいいじゃないか!」
「そう言うが以前にも鎖を外したとたん逃げたうえに、悪戯をしたな…拙者の髯が斬れたしな」
「あ、あれはわざとじゃないんだ。信じてくれよ…」
「信じたいが、翼徳の場合は他人に迷惑を掛けている自覚がない」
「そ、それは…」
「だから今日はお主に似合うものを購入したぞ」
「俺様に似合うもの?」
「これだ…」
関羽は張飛に首輪を見せた。
「なっ、これって首輪か?」
「そうだ…お主の首に良く似合うと思うぞ…」
関羽は首輪を見せるなりいきなり張飛の首に首輪を嵌めた。
ガチャリと首輪が付けられ、腕に繋がれた鎖を解くと首輪に鎖を繋いだ。
まるで犬が鎖で繋がれた状態であった。
「ちょ、雲長、いくらなんでも酷いよ!」
関羽は鎖を引っ張ると張飛は引き寄せられ関羽の腕の中にすっぽりと納まる。
「何、拙者の髯を切った報いを受けてもらうのだ…言う事を聞いてもらうぞ」
「そ、そんなっ!」
「それに犬にはちゃんとした躾が必要だしな…」
関羽は張飛にニッコリと微笑む。
張飛はその笑顔を見た瞬間、身体は硬直した。
これからされる行為に恐怖を感じているのであろうか張飛は身じろぐ事が出来ない。
「ああ、震えておるな…心配するな。優しく愛してやるからな…」
「ひっ、嫌あああ…!」
張飛は恐怖から悲鳴を挙げた。
関羽は張飛を押し倒すとその身体に躾と言う名の愛撫を施していった。
関羽が満足するまで張飛は散々と唏かされ続けた。
それからと言うもの関羽の躾のたわものか、張飛は関羽の側で大人しく過ごしていく事になったとさ。
終
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