「右と左どっちがいい?」
ゴロゴロと寝転んでいた私にそう言うと、自分の手をグーの形にしてどちらかを選ぶように指示する洋一。いきなりこの人何しだしたんだろう?そう疑問に思いながらも、彼のそれに付き合うことにする。
「何、いきなり」
「右と左どっちがいいか、つってんだよ、馬鹿。早く答えやがれ」
「じゃあ真ん中で」
「ふざけんなよ。真ん中とかあるわけねぇだろ」
「じゃあ洋一のオススメの方でいいよ」
「てめぇ、人の気も知らないで、」
「え、人の気って何?もしかして何かくれんの?」
「・・・」
「何だよもう面倒だな」
なぜか煮え切らないよくわからない彼の行動に少し戸惑っていると、彼ははあ、と溜息をついた後に自分の髪をくしゃくしゃと掻きながら口を開いた。
「あー、もういい。このままやっても埒あかねぇから俺が折れる」
「折れるって・・・?そっち一人で解決してたら私全く意味わかんないじゃ」
いきなり何かを開き直った彼の行動がわからず、抗議をしようとした瞬間。彼はそれまで握っていた右手を開いた。
「やる」
「・・・」
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・」
「何、これ」
「・・・見てわかんねぇのかよ」
「指輪・・・」
「欲しいっつってだろ、お前」
広げられた右手の中には銀色に光輝いた綺麗な指輪があった。わぁ、凄い。まるで少女マンガの主人公みたいだ。そう思いながらも自分の思想を告げる。
「・・・ごめんなさい、私結婚指輪以外は貰わない主義なんで」
「っざけんなよクソが」
「いや、これマジだって。・・・まぁ洋一ならうれしいけど」
「はぁ!?」
「おぉ、今までで一番の反応」
「いや、そうじゃなくて、お前今なんつった!?」
「今までで一番の反応」
「違ぇだろうが、その前!」
「あぁ、だって結婚するでしょ?私ら」
「・・・、聞いてねぇよ、そんなこと!」
「聞いてなくてもわかるモンでしょうよ、普通」
「・・・っ、」
「それとも何。そっちは私以外の子と遺伝子残す気だった?」
「・・・お前と結婚するに決まってんだろーが!・・・ったく、誰のために指輪買ったと思ってんだよ、クソ野郎が」
悪態をついている割には恥ずかしそうに顔を赤らめる彼の右手から指輪を取ると、笑いながらも私は彼と同じよう悪態をついた。
「・・・はいはい、これからも宜しくお願いしますよ、旦那さん」
「・・・うっせ」
1201102 200622修正