今日も今日とて家庭教師として笹山家へ向かう。少し緊張はするものの、前回や前々回よりは向かう足取りも軽くなり、気軽な気持ちでチャイムを鳴らすことが出来た。玄関の扉が開き美人で優しい笹山さんが「いらっしゃい」と声をかけてくれる。「おじゃまします」と言って上がらせてもらうと、3回目で慣れただろうと思ってか今日は部屋まで付き添うことはなかった。



兵太夫くんの部屋をコンコンとノックして声をかけて部屋に入ると、兵太夫くんは胡散臭い笑顔で「こんにちは、先生」と挨拶をした。机には予めお茶が置いてあり、休憩の時間まで笹山さんは部屋に近づかないんだろうなということがわかった。


「じゃあ、始めよっか。この間の続きだけど、わからないとことかあった?」

「あーここ?どうやって計算すればいいかわかんない」

「えっとこれはね・・・」


初回や前回よりもスムーズに進むお勉強タイム。取り合えず前よりは兵太夫くんと仲良くなれたと思いたい。わかりやすい様に頭の中で噛み砕きながら説明しながら兵太夫くんが問題を解いている様子を見る。おぉ、真剣な目は年に似合わずかっこいいなぁなんて思いながら解き終わるのを待っていると、兵太夫くんはパッと顔を上げ、私に解いた答えを見せた。


「出来た!」

「お、早いねー!どれどれ・・・。あ、正解!この問題難しいのによく解けたね〜凄い!」


ずるい引っ掛け問題だったので難しいかなと思っていたものの、兵太夫くんは見事に問題を正解した。純粋に関心したので兵太夫くんを褒めていると、恥ずかしかったのか顔をあさっての方向に向けてしまった。


「あはは、ごめんごめん。それじゃあ次の問題解いてみよっか。さっきよりも簡単だから兵太夫くんならすぐ出来ると思うよ」

「・・・わかった」


笑いながら謝ると、兵太夫くんはまたペンを握りなおして問題を解き始めた。この問題の答え合わせが終わったら丁度休憩かな、なんて思いながら兵太夫くんの様子を見ていると、予想通り私の答え合わせが終わり、次の問題に進むか進むまいかのところで部屋をノックする音が聞こえた。


「勉強お疲れ様。お菓子持ってきたわよ。先生も遠慮せずに食べてね」

「はい、有難うございます、頂きます!」


そういって笹山さんが持ってきたお茶菓子を見て私は笑顔のまま固まってしまった。何ということだろう。言葉にならない思いを口にしようと取り合えず口を開いてみる。


「・・・兵太夫くん」

「何」


私が固まっている間に笹山さんはリビングに戻ったのか、兵太夫くんは通常運転の悪魔に戻っている。でもいつもなら憎まれ口を叩いている兵太夫くんの顔が少し赤くなっているような気がした。・・・それもそうだ。今日のお茶菓子は三色団子に暖かい緑茶。この間私が好きだと言ったものばかりだったのだ。叫びたいほど嬉しい気持ちを抑えて、兵太夫くんに感謝の気持ちを伝える。


「別に・・・なまえさんのためじゃないから。僕が和菓子好きだからそうしてって頼んだだけだよ」

「それでも嬉しい。ありがと、兵太夫くん」

「・・・食べないなら貰うよ?」

「た、食べる!頂きます!」


結局その日は思わぬ出来事に嬉しさを隠せずに、私は家庭教師の時間が終わるまで終始笑顔のままだった。そしてそんな私を兵太夫くんは赤い顔で「気持ち悪い」といって何度も罵った。


まだ緊張はするけど仲良くなれた気がする。


110508

仲が深まる

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