…言ってしまった、言ってしまった、言ってしまった。
「あら、おかえりー!どこ行ってたの?ご飯は?」
いつの間にか、家に帰っていた母の顔も声も気にすることなんて出来ないまま、私は真っ先に自分の部屋に駆け込んだ。
「………。」
公園から走って帰ってきたせいでまだ落ち着かない息と共に、回っていなかった頭を、冷静に落ち着けていく。
「……言っちゃったんだ、…私」
口に出す度に思い出す。告白した時の沖田の、明らかに“困ってます”って表情。アイツのことだから、きっと、私が逃げ出した後に状況を把握して自分を責めているんだろう。と思うと、後悔と自己嫌悪が押し寄せた。
「…私、何してんだろ」
今まであんなに我慢してきたのに、沖田の前で涙まで流して。最終的には告白なんかして、沖田を困らせた。
「本当、馬鹿だな…」
涙を流しながら、そのまま数分間落ち込んでいると、突如馬鹿みたいに明るい携帯音が鳴り響いた。
“着信 土方十四郎”
(…土方くんだ。)
こんな鼻声のまま電話に出るのもどうかと思ったが、一人で落ち込んでてもどうしようも無いので、鳴り止みそうに無かった電話を取った。
「…はい、もしもし。」
「…おぅ。俺だ、俺。」
何処ぞの詐欺みたく電話に出た土方くんに、少し笑みが溢れた。
「…どしたの?いきなり電話なんかしてきて。」
私がそう聞くと同時に、黙り込む土方くんに何かあったのか、と聞こうとした瞬間、土方くんは遠慮がちに話し始めた。
「…総悟に、言ったんだってな。」
「…………」
沖田に聞いたのか、現場を見ていたのか何なのか、さっきあったことを悪びれも無く告げた土方くんに、正直返答に困った。
「アイツ、荒れてたぞ。」
「…そっか。」
どうやら土方くんは私と別れた後の沖田に偶然出くわし、相談やら何やらを聞かされたらしい。暫く話を聞いていると、思っていたより元気な沖田に一先ず安心したものの、明日学校で会うことを考えるとやっぱり落ち着いては居られ無かった。
「あんま深く考え込むなよ。お前は、お前らしくしてれば良いんだから。」
少しの沈黙の後、受話器の向こう側から聞こえた土方くんの声は、妙に心強くて、弱っていた私を元気付けた。態々電話を掛けてきてくれたお礼を言い、それから少し下らない話をして電話を切った。
「……よし。」
土方くんが背中を押してくれたお陰で、やっと決心出来た。沖田に…総悟に笑って欲しいから、私の本当の気持ちを言った上で自分の為にも沖田の為にも元の幼馴染みの関係に戻ってみせる。
081009
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