何が起きたのかわからなかった。回らない頭をフル回転させ、一つずつ整理していく。
確か今日は、チャイナと教室でイチャコラしてから、帰ろうと靴箱に向かうと、丁度土方がなまえを抱きしめている場面に遭遇してしまい、その放課後幼馴染みの好(よしみ)で、詳しいことを聞こうと思いなまえを呼び出せば、思いの外最低な言葉を浴びせてしまい、そして、
なまえは目に涙を浮かべ、俺に“好きだ”と言った。
「…………どうなってんでィ。」
一人で悶々としながら思い詰めてると、見慣れた黒髪が目に入った。
「…総悟じゃねェか。こんな所でどうしたんだよ。」
「……土方さん。」
俺は偶然通りかかったであろう土方に、今あったことを全て話すことにした。
「……ってなことがあったんでさァ。」
全て話し終えると、俺は自嘲する様に笑い、なまえに対する罪悪感で俯いた。
「…俺が悪いんでさァ。俺が、」
「…そんなことより、お前はどうしたいんだよ。」
「そんなことって何なんでィ!なまえは俺のせいで苦しんで…」
気付いたら、いつの間にか土方の胸ぐらを掴んで叫んでいた。でも、そんな取り乱した俺を諭す様に土方は声を大にした。
「…そうやって感情的になって自分を責めても何一つ解決しねェんじゃねェか?…お前がそうやって塞ぎ込んでても、何も現状は変わんねェだろ!」
「……。」
最もなことを言われて、俺は言葉が出なかった。俺一人が自己嫌悪に陥(おちい)った所で、出来ることなんて何一つ無いんだ、と改めて実感させられたからだ。
「…だが、どんな理由であれ、アイツを泣かせるんなら、例えお前でも許さねェからな。」
さっきみたいな諭す様な口調からあからさまにわかる怒声へと変わったと思えば、土方は“じゃあな”と言い、去っていった。
「…………」
苛ついた。今日までずっと自分の気持ちを隠してきたなまえにも、全部わかりきった様に諭す土方にも、そして何より、ずっと側に居たのにも関わらず、なまえの気持ちに気付けなかった俺に。
080804
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