深夜11時をゆうに過ぎた仕事帰り。忙しさのあまり、ここ数日は朝昼晩コンビニのサラダで済ますという、非常に健康そうで不健康な生活をしていた。締め切り間近の仕事を終わらすために残業の連続で、やっと今日全ての仕事が済んだ。何とか締め切りに間に合ったからよかったけれど、これが間に合わなかったらどうなったことやら。

久しぶりに自宅に帰宅し、適当にシリコン鍋に冷蔵庫の中にあった、キャベツやニンジン、ジャガイモ等々の野菜と粉末のダシをぶち込んで、電子レンジにかける。それを待つ間に、私はスマホを弄る。すると、久しぶりに見る名前が一番上に表示されていた。


「……一也」


もう何か月も会っていない、愛しい彼氏様だ。彼とは大学で知り合って、向こうからの告白で付き合い始めて、今。学部は違ったものの、野球部にマネージャーと選手として所属したことをキッカケに知り合った。私は、一般企業に就職、彼はドラフト一位指名でプロに。…あの頃が、懐かしい。

大人たちが口を揃えてよく、『学生の頃が一番楽しかったわ』と言うけれど、その意味がようやく分かってきた。なんて事ない日々にたくさん笑って。忙しいことは確かだったけれど、あの頃が一番楽しかった。社会人になってからまともに会えたのは本当に数回程度だ。それを寂しいと思う時間も与えてくれない。これが大人の恋愛と言う奴なのか、と思いながらも、切なくなってしまう。

そんな忙しい日々を送る一也からの連絡に、少し胸が踊ったのは言うまでもない。もしかしたら、デートの誘いかな。久しぶりのドキドキ感に、少し期待してしまう。それが女心という奴だ。一体どうしたのだろう、と思いながら“御幸一也”と表示されている所をタップする。そして、繋がったことを表すコール音。そして7コール目。


<綾華?>


と久しぶりに聞く、彼の声。相変わらずなのに、懐かしさを感じる。それほどまでに、会っていなかったのだろう。


「久しぶり、一也。元気してた?」
<おー。相変わらずの毎日だよ。綾華は?>
「私だって相変わらず。今日も締め切りに追われちゃって久しぶりに家に帰ってきたし」
<マジか!お疲れ>
「ありがと」


こんな事があった、あんな事があったと、他愛ない話をしていれば、一也の方から『でさ。話あるんだけどさ…』と切り出してくる。いよいよ本題か。そう思いながら、私は『うん、何?』と言う。すると、


<俺、メジャー挑戦しようと思う>


そう。私だって、いつまでも立ち止まったままじゃない。けれど、同時に彼も、いつまでも立ち止まったままじゃないんだ。



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