「そういやずっと気になってたんだけどよ。綾華って高校時代さ。誰かと付き合ったりとかあったわけ?」
「…ぶっ!」


ミナ兄が突然そんなことを聞くから、私も動揺を隠しきれなかった。
そして丁度、お味噌汁を飲んでいたときだったから、吹いてしまった。
…とても汚い話だが。

『うおっ、きったね!』と言う我が弟にうるさいと言い、どう答えたらいいのかを考える。
今まで私のそういうことに関して、興味もなかったくせに今更聞かれたって困るし!

そう思いながらも、竜也も『そういや、聞いたことなかったな』と思い出したように言うんだから、本当にふざけんな、と思ったのは言うまでもない。
それに、『写真見せて』とか言われた暁にはどうすればいいんだ。

ああ、もう…。
私の元彼はなんで今も昔もこんなに付き合うのに大変なんだ、と思いながらも、どんどんミナ兄とかはあることないこと言う。

『あー悪い。いなかったんだよな』『いたけど超インキャだったとか?』『やっぱりいなかったんだろ』なんて言うもんだから、私も苛立って、


「ちゃんとした彼氏いたし!」


と結局自分から暴露してしまう羽目になってしまった。
それには竜也も『マジで?』と言うような表情になっている。

ちゃんといたわよ、ちゃんと。
ああ、またやってしまった、なんて思いながら、御幸に心の中で謝る。
まあ、『内緒にしよう』とは言われてないし、何となく、その雰囲気で家族に紹介、ということをしなかっただけなんだけど。

大体私と御幸の始まりは友達からで、結構長い付き合いだったから、そんなに意識はしてなかったというのも原因の一つにある。
まあ、お母さんとお父さんが知ってるぐらいじゃないか?
御幸が寮生だったってこともあり、向こうのご両親にも挨拶はしてないし。


「まあ、…この後会う予定だから紹介するって」
「えっマジ?!」
「そう。急に決まったの」
「嘘だろ?!マジな話?!」
「何でそんなに驚くのよ、特に竜也」


ふざけんなと思ったのは言うまでもない。
何でそんなに驚くのよ。
失礼だとは思わないのか、我が弟よ。

そう思いながらも、私は『本当だってば。ねえ、母さん』と母さんに頼みの綱を渡せば、『そうよ』とニコニコ笑いながら肯定する。

まあ、御幸も『おばさんに挨拶していくから』と言っていたし、丁度いいでしょ、と思いながらご飯をほおばる。
本当、私のことを何だと思っているんだ、この大阪コンビは。


「あ、そういや言い忘れてたけど、俺もちょっと会う人がいるからそろそろ出るわ」


とミナ兄が席を立つ。
何だよ、ミナ兄も用事あるんじゃん。
そう思いながらも、『もしかして湊も彼女か?!』と竜也が茶々を入れる。


「違うっつーの。大学で世話になったダチだよ」
「じゃあ俺が姉貴の彼氏の顔を拝んどくわ」


ちょっとミナ兄の雰囲気が違うと思ったのは私だけだったんだろうか。
まあでも、普段から一緒にいる竜也がどうとも感じていないようだから、私の勘違いなのだろうけれど。

そう思いながらも、私は『行ってらっしゃーい』とミナ兄の背中に言うと、右手を上げて、『行ってくる』と言うかのような素振りを見せる。

たったこれだけのことに、懐かしいと思ったのは言うまでもない。




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